元気の連鎖が生み出す幸せな関係――ドラマ『初めて恋をした日に読む話』第5話
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(前回までのレビューはこちらから)
愛にはいろいろな種類がある。
男女の情愛、親子愛、師弟愛など、「相手を思い、慈しむ」という点では共通しているが、それぞれに微妙な感情の違いが出てくる。
ただし、それが、どの愛なのか明確にするのは難しい。なぜなら、多くの場合、一つの感情だけではなく、複数の思いが複雑に絡まっているからだ。
時として人は、その愛がどのような種類のものなのか、理解しきれずに悩んでしまったりする。ドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)第5話。登場する人たちはみな、そんな思いに振り回されているようだった。
塾の強化合宿中、インフルエンザになってしまった順子(深田恭子)と匡平(横浜流星)。隔離された部屋で寝ていた二人だったが、それを知った従兄弟の雅志(永山絢斗)は、その部屋で一緒に寝て、インフルエンザを移されてしまう。
もちろん、雅志の行動は、順子と匡平の仲を心配してのことだが、相変わらず無自覚な順子は、そんな雅志を「父性本能によるもの」と思い込む。そして、合宿中に見られた、匡平からのアクションも、全て「師弟愛」によるものだと考えているのだ。
ここで、「いやいや、匡平の思いは完全に恋愛感情だろ!」とツッコミを入れることは簡単である。ただ、ちょっと考えてみてほしい。彼の中には、本当に恋愛感情しかないのだろうか?
女性としての順子に魅力を感じていることは確かだろう、しかし、いざとなった時に自分を守り、悠然と意見を言う姿に、「人間愛」のようなものも感じてはいないだろうか。そして、順子の思っている「師弟愛」だって感じているはずである。それは、自分に生き方を教えてくれた人に感じる、自然な感情だから。
つまり、匡平の順子への思いは、それらの複雑な感情が絡み合ってできている。そして多分、匡平自身も、その気持の整理ができていないのだ。
今回、もう一つキーになっているのは「元気が出る」という言葉だ。
学校の図書室で勉強中、スマホで順子の写真を見る匡平。その姿を見た担任の山下(中村倫也)に問われると、「元気が出るんです」と答える。
「好きなんです」でも「ずっと見ていたいんです」でもない。しかし、それは、どんな言葉よりも強く、彼の気持ちを表しているように思える。
塾では、現代文の教習が行われていた。文章を読んで、作者の意図を答えるという問題。順子は、「自分の主観はなくし、相手の気持を先入観なく理解しなければならない」と教える。このシーンは非常に面白いところだ。なぜなら、周りの人の自分に対する思いを一番理解できていないのは、他ならぬ順子なのだから。
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