『さすらい温泉 遠藤憲一』しずちゃんの代打で漫才披露! 天津・木村が相方役を好演
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■今回、四次元トランクから出てきたものは?
なんでも出てくる健さんの「四次元トランク」から、今回は聡美と全く同じ舞台衣装(髪留めや蝶ネクタイまで)が。
あらかじめ用意していたわけがあるはずないのだが、それでも出てくる。この番組唯一のファンタジー要素。
今回は目的の服を探しているとき、トランクの中からテディベアらしきものや草鞋らしきものが飛び出しており、この「関係ない余計なもの」を見つけるのも楽しい。
■健さんの初漫才
女装して漫才を行う健さん。
関係ない枕からの「あーー結婚したい!」「突然やな!」。ネタへの入り方がよくある導入で笑ってしまった。
細かくは省くが、この漫才シーンはしっかりネタ合わせして、舞台さながらに「ネタ」として披露したのだろう。
荒いながらも新鮮なグルーブ感が出ていた。
そして、イマイチ受けなくなってきた後半、帰ったはずの聡美が戻ってくる。
男を振って吹っ切れたからなのか、健さんとの話で初心を思い出したからなのか、前のめりで大爆笑をとる聡美。
だが、舞台を降りると恩人の健さんの姿はどこにもない。
「貴女の夢の足かせになっちゃいけない」と、聡美の「想い」が膨らむ前に身を引いたのだ。
惚れさすだけ惚れさせて、置いていなくなる、西部劇のような美学。
宿から出てきた聡美が大声で叫んだ「健さーーーん!」の声が「シェーーーン、カムバーーク!」みたいに聞こえた。
仕事の途中で挨拶もなく派遣先からいなくなることになるが、そんなことはどうでもいいのだ。渡り鳥のように健さんは次の温泉に向かう。社会人失格なその気まぐれっぷりは、まさに「さすらい」。
■天津・木村の巧さ
2006年に公開された映画『フラガール』以降、役者としても評価されているしずちゃんももちろんよかったが、天津・木村の「いかにもいそうな関西の若手漫才師のツッコミ」役もとてもよかった。
相方との開きかけた距離を感じながらも、マネジャーもついてこない現場でマネジャー的な仕事もこなしつつ、割り切ったかのように相方の分まで腐らず周りに媚を売る。
出番は決して多くないのだが、メインの邪魔をしない存在感で、的確に芝居を締めた。
終わった後、爆笑だったことを支配人に褒められているときの、喜びながらも心の底からは喜んでいない、どこか醒めているような半・作り笑顔は、おそらく普段からしているのだろう、なんとも言えない味わいがあった。
境目が薄れつつあるこのご時世、こんな分類に意味はないのかもしれないが、それでもコント師以上に漫才師は普段から素の部分まで微妙に「演じて」いるのだろう。そんな風に知ったかぶりたくなるくらい、自然な芝居だった。
そして、ドラマ『火花』のときの井下好井・好井、とろサーモン・村田もそうだったが、ネタ中、片方が「本職」だと急造のコンビでもネタが締まる。
面白い面白くない以前の、漫才として成り立ってる空気を作り出せるのが、プロならではの技術だ。
今回の木村も、同じプロであるしずちゃん相手のときはともかく、「素人」である遠藤を、さりげなくフォロー、誘導しながら漫才として成り立たせていた。
ただ台本のネタをやるだけでなく、観客へ見やすく橋渡しをし、呼吸をするように見所を整えながら、自然に話してるように話を運ぶのは、場数や経験がものをいうはずだ。
木村が隙間を埋めたり諸々を担ってくれたので、急造のコンビの割に遠藤もやりやすかったのではないだろうか。
途中から(演出的に)、意味なくエロ詩吟をやらされてしまうのでは? と、勝手にハラハラしながら見ていたが、そんな野暮なこともさせられることなく、無事役目を全うしていたのでよかったです。
やってても、それはそれで見たかったけど。
さて次回は法師温泉。オープニングでも使われてるあの名湯が登場。見ましょう。
(文=柿田太郎)
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