M‐1出場芸人のすごさがわかる、泣けるお笑い芸人マンガ『べしゃり暮らし』
#お笑い #マンガ #ザオリク的マンガ読み
■最大の泣けるテーマ「コンビの絆」
本作で語られている最重要テーマ、それは「コンビの絆」または「コンビ愛」です。作中にはあらゆるタイプの漫才コンビのエピソードが描かれています。やれくっついただの別れただの、別れそうだったけどやっぱりヨリが戻った、ほかのやつに相方を奪われた……などなど、恋愛か! ってくらい人間模様の宝庫なわけですが、個人的に一番好きなのは、「べしゃり暮らし』のライバルコンビ「げんこつロデオ」のエピソードです。
「げんこつロデオ」は破天荒でケンカっ早い岩隈と、ビジネスライクでクールな内川の漫才コンビです。トラブルメーカーの岩隈に対し、いつも我関せずで、相方なんかいつでも切り捨てたる、というスタンスを取っていた内川ですが、ある日、岩隈からコンビ解散を持ちかけられます。
岩隈の父親が会社で横領を行い、5,000万円もの借金を背負ってしまったのです。父親のしでかした借金を返すため、相方の内川には迷惑をかけられない、という岩隈の思いから出た解散話でした。
「くそ…意味なかったなぁ、俺の人生…」
がっくりとうなだれる岩隈にかけた内川の言葉は意外なものでした。
「不幸や思うから意味なくなんねん、笑ろとけ笑ろとけ」
「5,000万? ちっさ、将来2人でどれだけ稼ぐ思てんねん」
「ちっ、俺も人がええな、まぁしゃーない、ビジネスパートナーやからな」
クールに言い放っているようで、実はすごく相方思いだったのがビンビン伝わるこのセリフ。いやー、何度読んでも泣けるシーンです。実際、この文章タイプしながらも涙止まらないし。どんだけ涙腺弱いねん!
■最高のクズ男「辻本の父ちゃん」
終盤に登場する最重要人物といえば、辻本の父ちゃんです。もともと引きこもりでしたが、一念発起して大物お笑い芸人の付き人になったものの、その後、クビになってからはグダグダの転落人生。妻子(辻本のおかんと辻本)を捨てて失踪したり、放火犯として逮捕されて刑務所に入ったり……。その間、おかんは一人で辻本を育て、過労のために入院するなど、苦労のし通しでした。そんな無責任な父親を、絶対許さないと誓う辻本。そりゃそうですよね。
そんな辻本の父ちゃんですが、不器用さゆえに周りに迷惑をかけてしまうけど、決して悪い人間ではないのでした。結婚時の妻との約束「お笑いネタを一日一本作る」をずっと守り続けていた真面目さや、放火も実は冤罪だったことが判明するなどで、次第に辻本と和解ムードに。
クライマックスは、NMCの準決勝で披露された「べしゃり暮らし」の漫才ネタ「父親に謝りたい」。すごく遠回しにステージ上で不器用な和解メッセージを送る辻本。こんなシーン見せられたら泣いちゃいますよね。
というわけで、読んだら涙が止まらないお笑い芸人マンガ『べしゃり暮らし』をご紹介しました。華やかなお笑いの世界のその裏で、人知れずとてつもない苦労を重ねているお笑い芸人たち。これからは若手芸人の漫才を観たら、笑わずにむしろ泣いてやろうと思いました(やめとけ!)。
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)
◆「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから
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