メディア露出もライブ活動も一切なし! 「CD至上主義」を貫いたZARDが今でも愛されるワケ
#平成J-POPプレイバック!
しかし2007年、坂井が亡くなったというニュースがいきなり流れ、世間に衝撃が走る。
彼女はがんの治療のために長らく入院していて、その院内で転落死したというものだった。本当に驚いた。享年は40と報道されたが……それもリアルに響かなかった。いや、事実として解釈しようとはするのだが、やはりそれだけ違う世界にいる人のような感覚があったからだ。何しろ時を経る中で、「この娘も大人びたな」とか「成長したんだな」みたいな、普通のアーティストならこちらがいくらでも持つような感慨が一切ないままだったのも大きい。
だから、そもそも病気だったとかも……彼女が入院生活を送っているとか、薬を飲んだりしている光景すら、想像がつかない。当時はそれを自分の頭で必死に理解しようとしたものだった。こうした悲しみに包まれながら、ZARDは活動を終えていったのだった。
今思えば、坂井が亡くなったことで、ZARDのイメージは神格化されたように感じる。ZARDの音楽が時代を超えて訴求し続ける要因のひとつには、このこともあると思う。
しかし、なんといっても一番の理由は、ZARDの音楽に息づく普遍性だろう。残された作品の中には時代性がうかがえるアレンジ(シンセやギターの鳴りは、いかにも90年代だ)や言葉もあるが、基本的には時や場所など関係なく響くポップスである。時流に左右されずに聴ける歌ばかりだし、その中で人の心のスキ間に入ってくる言葉が多いと思う。
07年以降のZARDはここまでの間、残された音源や編集盤のリリースはしてきたものの、それ以外のことは基本的には一切しないままでいる。そこはスタッフたちもあの頃のZARDのままでファンの記憶にとどめられることを望んでいるのではという気がする。
今回の倉木とのコラボも、あくまで番組内での企画だ。ZARDは、坂井泉水の歌は、今のまま、みんなの心に、それぞれのものとして残っていくのが、僕もいいと思う。
でも、彼女の姿を何年ぶりかにテレビの画面で見たことは、昔のさまざまな記憶を呼び起こしてくれた。そして思い返した。一度だけでいいから、彼女の姿を生で見たかったことを。あの歌を生で聴きたかったことを。
この思いは、たくさんのファンの方々も、きっと同じはずである。
●あおき・ゆう。
1966年、島根県生まれ。男。
94年、持ち込みをきっかけに音楽ジャーナリスト/ ライター業を開始。
洋邦のロック/ポップスを中心に執筆。
現在は雑誌『音楽と人』『テレビブロス』『コンフィデンス』『 ビートルズ・ストーリー』『昭和40年男』、
音楽情報サイト「リアルサウンド」「DI:GA online」等に寄稿。
阪神タイガース、ゲッターロボ、白バラコーヒー、ロミーナ、 出前一丁を愛し続ける。
妻子あり。
Twitterアカウントは、@you_aoki
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