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錦戸亮主演『トレース~科捜研の男~』、視聴率復調の裏に木村拓哉をアゲた“福男”の存在!

■進化し続ける“フジの若手演出家”

 今回は脚本だけでなく演出も素晴らしかった。演出家は相沢秀幸氏。調べたところ、5年ほど前から演出を手掛けるようになり、サスペンスやラブコメなど活躍は多岐に渡る。直近だと、ここ数年1ケタ視聴率を連発するフジの木曜10時枠で2桁視聴率の快挙を成し遂げた『グッド・ドクター』(2018年・フジテレビ系)の演出も担当している。

 さまざまなジャンルで培われた演出の幅は本作でも見られる。先週の第3話では、事件の冷酷さと人間の温かみの緩急で1時間をもたせた。だが、正直言えば、第1話と第2話を手掛けた松山博昭氏と比べるとテンポ感とキレがなく、モッタリとした印象ではあった。

 しかし、今回の第4話ではその課題を克服するばかりか、テンポとキレを武器にして見せた。

 ネタバレしてしまうが、クライマックスで、兄が保険金を自分に与えるために自殺を他殺に見せかけた事を相良が知るシーンは圧巻だった。

 相楽が幼少期の兄との想い出を回想しながら、死の真相を聞かされる場面なのだが、映像・音楽・台詞を折り重ねるタイミングを少しでも間違えていれば感動は薄れていただろう。しかし、「バカだな……嘘が下手なんだよ」と、亡き兄を想い泣く相良を起点に置き、回想映像を切り上げるタイミングと音楽を入れるタイミングは鳥肌が立つほど絶妙だった。

 その他にも、転んだノンナに礼二が手を差し伸べて立たせるシーンも良くできていた。下手に撮れば、突然ヌッと現れた礼二に驚き転んだドジな女・ノンナが立たせられるだけの場面。だが、テクノミュージックとの調和でカット割りを細かくし、礼二の前方不注意ぶりを忘れてしまうほど、礼二を演じる錦戸をカッコよく見せていた。

 役者と台詞を輝かせる相沢氏の演出をこの先も見てみたい。また今回を上回る進化を見せてくれるだろう。

■『踊る~』や『HERO』の栄光を捨てられないフジの風潮

 今回もまた、脚本家と演出家をベタ褒めしてしまった。しかし、指摘すべき点が一つある。それは、過去のフジ作品の焼き廻しとも思える場面の頻出だ。

 例えば、今回の消極的だった科捜研メンバーが憎まれ口を叩きながら、ノンナの捜査を手伝い始める場面。これは『踊る大走査線』(1997年・フジテレビ)の第4話の織田裕二演じる青島刑事が犯人を取り逃した万事休すの場面で、所轄の仲間たちが憎まれ口を叩きながら犯人を連れて現れるシーンと似通っている。

『トレース』に限ったことではない。近年のフジの刑事ドラマでは、チームの結束を上げる場面では何かと同シーンが使いまわされ、仲間感を見せる場面では『HERO』(2001年・フジテレビ)の横一列並びが多用されている印象だ。「どっかで見たな」という既視感は、見てる側を冷めさせてしまう。

 先輩社員を喜ばせるための踏襲なのか、尊敬の念を込めてのオマージュなのかはわからない。ただ、優秀な若手クリエイターには過去に縛られず新たな名場面を生み出してほしい。

『トレース』が良作故に無茶な注文をつけてしまったが、2月4日放映予定の第5話も楽しみにしている。

(海女デウス)

最終更新:2019/02/04 20:30
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