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NGT事件に見る、ビジネスモデルの限界。”会いに行けるアイドル”が招いた悲劇

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 男ならば憧れの女優や歌手と仲良くなりたいと思うもの。「恋人になったら」と夢を持つこともあろうが、所詮は夢のまた夢。妄想だけで終わる。それが「スター」の存在である。星のように遠くで美しく輝いて人々を魅了しても、決して手の届かない存在。今の芸能界に本当の「スター」と呼ばれる人はほとんどいない。現役を続けなおかつ映画で主演を務める吉永小百合(73)ぐらいしか思い浮かばない。今もストイックなまでの女優人生は変わらず、私生活の顔が伝わってこない。子供はなく夫と2人の生活だが、実態は伝わってこない。映画記者が話す。

「スターは私生活を徹底してベールに包むことで、神秘性を増す。吉永はそれを貫き通し続けている唯一の女優。夫婦で街を歩いている写真だけ撮ってもスクープだと言われているほどです」

 文字通りのスター女優もいれば、NGT48のようなアイドルも同じ芸能人。が、実態は大きく異なる。NGTは「会いに行けるアイドル」のキャッチで売り出した手の届くところにいるアイドル。2015年に、AKB48の7組目の姉妹グループとして新潟を拠点にスタート。新潟に専用劇場を開設し、東北地方も含め北陸地方出身者が主なメンバー。ファンも地元の人が中心だ。徐々に人気は広がり、いよいよ東京進出も目前に迫っていた矢先に事件は起きた。メンバー一期生の山口真帆(23)は青森県出身。「明日のスターを夢見て」新潟までやってきた。住まいは運営者が借り上げたマンションだが、そのマンションでファンに襲われたのだ。昨年12月8日夜、山口が帰宅した自宅マンションの玄関先で待ち伏せていたファンの男2人が声を掛けたところ、大声を出したために口を手でふさいだ。駆けつけた警官に暴行容疑で逮捕されるも、不起訴となり12月末に釈放された。事件は公表されなかったことで、山口が行動に出た。事件発生から1カ月後、「SHOWROOM」の生配信で事件の全貌を涙ながらに訴えた。芸能関係者が話す。

「SNSなどの配信がある時代なので昔なら闇に葬られていた話でも、自ら発信することで公にすることができる。山口も運営側が適切な対応をしなかったことで、自ら恐怖を訴えて社会に告発。運営側の今後の対応を求めたのでしょう」(芸能関係者)

 告発の中で山口がもっとも疑念を抱いていたのが、「男はなぜ山口の自宅を知っていたのか、帰宅時間がなぜわかったのか」の二点にあった。自宅に関しては東京と違い狭い街。しかも地元の劇場が活動。自宅を知るのは簡単なことだが、帰宅時間まではそうわからない。そこで浮上したのが「メンバーが教えた」という話だった。山口も疑惑を持っている。

「漫才師でも仲が悪いと言われる世界。グループはもちろん、50人もの組織になれば派閥もできるし、お互い人気を巡ってライバル関係にある子に対して、足の引っ張り合いぐらいはやる」(芸能プロ関係者)

 山口は帰宅時間を教えた犯人を「メンバーの子」と特定した。運営側は調査中としているだけで、未だに真相を明らかにしていない。今後の対策も明確ではないが、むしろ根本的な問題はNGTのようなグループのあり方。「会いに行けるアイドル」として売り出して成功したが、ここにきて弊害が現実のものになったのが今回の事件。実際、犯人の1人は山口と同じマンションでしかも真ん前の部屋に住んでいた。こんなことができてしまうのが、地方アイドルの悲劇でもある。

「俗に“太いファン”と呼ばれ、コンサートには最前列でかかさず応援する。グッズやCDも買ってくれる。運営側にとっては一番の上客。大事に扱はなければならない。襲った犯人グループは特定されているといえ、不起訴処分。今後、コンサート会場から締め出しをすれば、彼らの行動がさらに暴徒化する恐れもある」(芸能関係者)

 運営側がタレントの管理をするといっても、限界がある。「会いに行けるアイドル」商法の大きなリスクだ。従来のスターのように手の届かない存在であれば、ここまでファンは夢中にならないし、人気は出なかったはず。ファンに近づければファンは夢中になる。それは過去の例が物語っている。

「ビジネスモデルとなったAKBのメンバーの中にもファンとの交際が明るみになった子がいる。ファンは誰もが会いに行けるだけでなく、“より仲良くなりたい”と思うのも無理はない。だからアピールしようとお金を使って応援に来る。対応策はますます難しくなる」(音楽関係者)

 秋元康が作り上げた新たなアイドルビジネスは個人の写真集がバカ売れするなど、確実に化学反応を起こしている。事務所側にとってはタレントの卵のなかから大化けをする子の誕生を待っている。今や一大芸能ビジネスとなっているグループアイドル商法。今回は軽度の事件だったが、芸能史を見てもファンの暴走が激化したケースは少なくない。社会的な問題に発展する可能性もある。そろそろ考え直す時期に来ている。

(敬称略)

二田一比古
1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。

最終更新:2019/02/03 20:00
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