コンビニ成人誌販売中止! アダルト系出版各社に聞いた“今後の対応策”は?
#雑誌 #コンビニ
いずれは、そうなるだろうと思っていたら、いよいよその時が来てしまった。セブン-イレブン・ローソン・ファミリーマートのコンビニ大手3社が軒並み「成人向け雑誌」の販売を取りやめることを決めたのである。
東京オリンピック・パラリンピックを控え、外国人旅行者からのイメージ低下を避けることを理由として挙げているが、これはあくまでお題目。どのタイミングで切り捨てようかと、機会を考えていたコンビニ各社にとって、東京オリンピック・パラリンピックは願ってもない好機となったわけである。
かつては、コンビニにとって雑誌コーナーはなくてはならない存在だった。雑誌を買いに立ち寄る客が、ついでにおにぎりやジュースも買っていくというビジネスモデルが出来上がっていたからだ。
でも、今や雑誌を読む人は減少の一途。ATMの使用など、入店動機が雑誌以外に移ってしまえば、卸値の高い商品である雑誌はコンビニにとっては無用の長物。雑誌コーナーを丸ごと撤去しても、コンビニの売り上げは3~5%減少する程度。むしろ「成人向け雑誌」に限らず、雑誌コーナーそのものを撤去して、冷凍食品ケース(リーチイン)やイートインコーナーを設けたほうが、コンビニとしてはおいしいのである。
つまり今後、雑誌コーナーを大幅に縮小していく第一歩として「成人向け雑誌」の取り扱い中止を決めたというのが、正しい見方といえるだろう。実際、すでに一部のコンビニでは実験的に雑誌コーナーのほとんどない店舗もある。コンビニが飽和状態といわれる中で、レイアウトの改装と雑誌コーナーの縮小は、これから本格化していくものと思われる。
さて、このコンビニ各社の決定にSNSを見ると、さまざまな意見が飛び交っている。女性や子どもに対する悪影響があったとして、取り扱い中止を支持する声。はたまた「成人向け雑誌」という呼称が曖昧だと非難するもの。
確かに「成人向け雑誌」という呼称は曖昧。要はコンビニにおける小口シール止めの自主規制をしている雑誌のこと、より難しい言葉を使えば「類似図書類」を指していると思われる。それを「成人向け雑誌」と記載しているのが問題だという人もいる。
でもそんなのは、単なる知識のひけらかし。実際のところ、コンビニに置かれているエロ本が、どういう位置づけにあるのか知りたいとすら思う人などいないのが現実ということだ。書こうと思えば、このシール代は1冊当たり20数円だとかいくらでも書けるのだけど、そんな話は誰も求めていないというのが実情である。
さて、販売場所が減ってしまうという事態なわけだが、意外に出版社のほうは冷静そのもの。アダルト系出版社の業界団体である出版倫理懇話会に尋ねたところ「いずれこうなるとは思っていたけど、来る時がきたか」と、まったく驚いている様子もなかった。
この話から見えてきたのは、すでに多くの出版社は、こうなることを予測して対策を準備していたのではないかということ。「オリンピックの1年前に合わせて、8月から取り扱いをやめるのは性急」とはいうものの、コンビニの対応を非難するような言葉は一切出なかった。
そんな各社の対策というのは、まずネットへの移行。出版倫理懇話会に属するジーウォークの例を挙げると、すでに中心は電子書籍。それと、電子で配信した作品の紙での単行本化に絞られている。実にアダルト系の電子書籍での売り上げは目覚ましいものがある。過日、筆者がコアマガジンの編集者に聞いたところによれば、すでに電子書籍と紙の売り上げでは電子書籍のほうが紙を凌駕している現状。
結局のところ、放っておいても紙のエロ本は近い将来に消滅する運命のもの。オリンピックがなくても、コンビニは扱いをやめるだろうとの予測で各社は動いていたというわけである。
これは、コンビニに置かれているエロ本を見てみるとわかるが、すでに出版社も限られている。グラビア系の雑誌は、読者の年齢層も限られており、いずれは消えるもの。エロマンガ系は電子書籍への移行が加速するというのが、これから起こることだろう。
そこで何度か取材している定額エロマンガ読み放題サービス「Komiflo」にも参加しているワニマガジンの編集者に尋ねてみたところ、こんな話を。
「特に、編集部でも何も話題になっていなくて。何か変わるんでしょうか? 逆に知っていたら教えてくださいよ」
誰もが利用する、すなわち軸となるメディアの多くは、時代によって変わるもの。かつてのように、雑誌が主体となって娯楽や情報が流通するのも、二度と訪れないほんの一時代のことに過ぎなかったのか。
ところで……SNSは騒がしいが、その中のほとんどが普段からコンビニでエロ本を買っているように見えないのはなぜだろう。
(文=昼間たかし)
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