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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 遠藤憲一がテレ東深夜に新たな系譜を

『さすらい温泉 遠藤憲一』テレ東深夜に連なる、新たな「フェイクドキュメンタリー」の系譜

テレビ東京系『さすらい温泉 遠藤憲一』番組公式サイトより

 あの遠藤憲一が、役者を引退して温泉宿で仲居として働くらしい……なかなか奇抜なビッグニュースが飛び込んできた。

 その真偽を確かめるべく遠藤にカメラが密着、そこに映るのは、温泉街で起こるさまざまな人間ドラマに、前のめりに首を突っ込む遠藤の姿。またしても一癖ありそうなテレ東深夜ドラマ『さすらい温泉 遠藤憲一』の第1話。振り返りましょう。

 

■フェイクドキュメンタリーである必然性は?

 番組は、遠藤本人への直撃取材からはじまる。

「遠藤さんが俳優を引退されるって聞いたんですけど」

 真意を問う番組ディレクターの質問を無視して、旅支度を進める遠藤。ドキュメンタリーであることを強調した導入部分だ。

 野暮を承知で言わせていただくなら、遠藤は現実では役者も辞めないし、温泉で働きもしない。現実とフィクションが交錯するいわゆるフェイクドキュメンタリーと呼ばれる手法。

 この手法は、テレ東深夜ではお馴染みで、『山田孝之の東京都北区赤羽』や『山田孝之のカンヌ映画祭』、斎藤工が芸人を目指した『マスクメン』、そして、それこそ同じ遠藤が本人役で出演した『バイプレイヤーズ』などもこれに含まれる。

 番組名に「遠藤憲一」の文字がデカデカと入っているのも、本人のままであると強調するためだろう。

 しかし、この冒頭の「前フリ」パート以降、ドキュメンタリー的な見せ方は影を潜める。

 草津の温泉宿(奈良屋)に着くなり、そこの番頭に「温泉宿専門、仲居派遣サービス・エンスタワーから参りました、中井田健一です」と自己紹介する遠藤。

 宿の従業員らも、彼があの「遠藤憲一」であると気づく様子もなく、これ以降、中井田健一を主役とした「温泉を舞台にした人情ドラマ」が進む。

 1話見ただけで言うのもなんだが、今のところこの作品における「ドキュメンタリー」部分の必要性は、他のテレ東のフェイクドキュメンタリー番組に比べると低いと思われる。

 他の番組(『山田孝之の~』や『バイプレイヤーズ』など)は、それが本人である必然性があるのだが、この番組は「中井田健一」と名乗って以降、彼が「遠藤憲一」本人であるとする見せ方は特になく、ドラマ終了後に、再び冒頭のディレクターが遠藤にインタビューするごく短いくだりはあるものの(やはり質問には答えない)、完全にドラマパートとフェイクドキュメンタリーパートが別れている。

 この見せ方が今後どんな効果を生むのか。

 

■「健さん」と呼ばれたがる遠藤

 遠藤、いや中井田は、自己紹介時に必ず「健さんと呼んでください」とアピールしており、意図的に違う自分になろうとしているようにも見える。

 しかも、さっそく奈良屋で働き出すのだが、その所作は昨日今日仲居を始めた人間のこなれ方ではなく、もはや長年役者と二足の草鞋を履いていたかのような、こなれっぷり。得体が知れない。

 ちなみに、温泉の効能や男湯女湯が入れ替わる時間など、実在する奈良屋の説明を中井田……いや健さんが働きながらしてくれるのだが、温泉ロケ番組でリポーターから情報を説明されるよりも、ドラマの中でさりげなく(というか、あからさまな、でもあるが)情報に触れさせられる方が、遠藤の色気溢れる声のおかげもあって押し付けがましくなく、聞いていて心地よい。

 これはフェイクドキュメンタリーにしているからこそ許される見せ方だろう。普通のドラマで宣伝の強い台詞やナレーションが入ったら興醒めしてしまうはずだ。

 そして、健さんは実に気持ちよさそうに風呂に入る。

 いや、実際気持ちいいのだろうが、グラビアアイドルとかでもないのに、その入浴っぷりについ見入ってしまうほど「画がもつ」。女性ファン的には、やはりたまらないのだろうか?

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