“女優”イモトアヤコが『下町ロケット』シリーズの転機に?
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それはキャスティングにも強く現れている。もともとこのシリーズは、さまざまな分野から演者を連れてくることに定評がある。吉田鋼太郎や手塚とおるが広く知られるきっかけとなったことは有名な話だが、立川談春のような落語家からスポーツ解説者の松岡修造まで、実にさまざま。今回は古舘伊知郎と福澤朗という男性アナウンサーも出演していた。
その意味で毎回、どんな俳優が登場するのか? というのも見どころのひとつなのだが、なんといっても素晴らしかったのは、ギアゴーストの女性技術者で、後に佃製作所と共闘することになる島津裕を演じたイモトアヤコを起用したことだろう。
セーラー服に太い眉毛がトレードマークのイモトは、バラエティ番組『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)で珍獣ハンター・イモトとして世界中を旅する姿が話題となり、高い人気を獲得した。
俳優としては、13年のドラマ『ご縁ハンター』(NHK)で婚活に苦しむ女性を演じ、一部で高い評価を受けていたが、近年では16年の北川景子主演ドラマ『家売るオンナ』(日本テレビ系)に出演。不動産会社で働く、やる気のない女性社員・白洲美加を演じた。当初は女芸人ということもあり、単純なコメディリリーフかと思ったが、物語が進むにつれて成長し、裏主人公とでもいうような存在感を見せていた。先日スタートした続編『家売るオンナの逆襲』にも引き続き出演しており、本作に欠かせない存在となっている。
『下町ロケット』でイモトが演じた島津は有能な技術者だが、それ以外は30代の地味な女性だ。普段は自信なさげに見えるが、独身であることを卑下したりといった女芸人的な振る舞いを見せる場面はほとんどない。佃社長とボウリング対決をする場面など、思わずクスッと笑ってしまうシーンはあるのだが、コメディ要素は薄く、抑制された芝居を見せている。つまり、等身大の働く女性として魅力的だったのだ。もしも華やかな女優が颯爽と演じていたら、女技術者としての島津に説得力は生まれなかっただろう。
『下町ロケット』にイモトが出演し、魅力的な女性を演じたことは、おじさんたちの物語だった本作にとっても大きな転機となるだろう。演技のうまい女芸人による等身大の女性が登場する作品はどんどん増えるはず。本作が、そのきっかけになればと思う。
●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆
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