米津玄師の実家に週刊誌が直撃取材…問われるマスコミのモラル
昨年大晦日の『第69回NHK紅白歌合戦』の歌手別視聴率ランキングで、1位のサザンオールスターズ(45.3%)に次ぐ44.6%という高い数字を出した米津玄師。
『紅白』の舞台でも披露した「Lemon」は、フィジカルとダウンロード合わせて200万枚以上を売り上げた2018年最大のヒット曲だが、この『紅白』の視聴率は米津玄師の人気を改めて再確認させるものであった。
これだけの人気者になると出てくるのが、週刊誌による「プライベート暴き」の記事である。
すでに、11月29日発売の「女性自身」(光文社)では、米津玄師が20代の女性と都内のカフェレストランに3時間ほど滞在したのを写真付きで報じられている。また、記事のなかでは、彼のことをデビュー当時から支えてきたという所属事務所社長の女性が、楽曲制作にかかりきりになる米津玄師をサポートするため、自宅マンションに深夜まで滞在することがあるとも記されていた。
1月10日発売の「週刊文春」(文藝春秋)も同じような記事を掲載。同誌では、所属事務所社長の女性が私生活のパートナーだったこともあり、半同棲状態だった過去もあると報じていた。
正月明け早々、「文春」記者が米津玄師の実家をゲリラ訪問
ここまでは「女性自身」と対して変わらないのだが、「週刊文春」はひとつ大きく違うことをしている。
徳島県にある米津玄師の実家にまで記者が乗り込み、両親に直撃しているのだ。
記事では、1月6日に記者が出向き、『紅白』の感想を聞いている。
記者による<紅白はどうでした?>との質問に対し、父が<私、紅白、見てないんで。関心がないんで!>と会話を切ろうとする一方、母は<いえいえ、そんなことはないんですけど。私たち両親は温かく遠くから見守っていくだけです>と一応場をおさめようとしながらも、<取材はお断りしてくださいということなので、すみません>と、事務所から取材は止められていることを理由に、それ以上の回答は控えた一部始終が掲載されている。
米津玄師本人への取材であれば、100歩譲って許される場面もあるかもしれないが、何の関係もない実家にまで押し入ってプライバシーを蹂躙するような取材は許されるものなのだろうか?
RADWIMPS野田洋次郎はパパラッチ自宅訪問への怒りを曲に
こういった「実家への取材」を問題視し、それを曲にして訴えたミュージシャンもいる。
RADWIMPSは2018年12月12日に最新アルバム『ANTI ANTI GENERATION』に収録された「PAPARAZZI~*この物語はフィクションです~」のなかで、パパラッチの取材への憤りを吐露しているのだ。
彼は歌詞のなかで取材の一部始終を具体的に描写し、そのプライバシー侵害へ怒りをぶちまけている。
<俺のとこなら100歩譲ったとしても/実家の親の家にへばりついて堂々直撃してきたな/「息子さん、苦節10年 成功してよかったですね 親御さんとしてどうですか?」 あんたの親にも聞いたろか/よかったですね、息子さん無事立派に大きく育たれて/朝から車の中で一般市民の家の前張り込んで/嫌がるのを無理やり話聞いて 許可も取らず写真撮って/雑誌に載せて 稼いだ金で 今日も生きてる息子さんに/ひとこと何かありますか? ないですか? ないわけないですよね?/なくても聞いてくるのが息子さん 絞り出してでも言ってごらん>
曲タイトルに「この物語はフィクションです」と書かれているが、これは実際にあったことだろう。
ニュースサイト版「女性自身」(2017年1月18日付)には、記者が野田洋次郎の実家にまで押しかけ、さらに、出かけようとした母に対して<紅白出場おめでとうございます。活躍ぶりをどう思われますか?>などと質問をぶつけた記事がある。
歌詞にある「息子さん、苦節10年 成功してよかったですね 親御さんとしてどうですか?」との質問との近似から、このエピソードは「女性自身」との一件なのではないかとも推測されるが、「女性自身」以外にも同じような強引な取材を行った芸能マスコミはきっとあることだろう。
RADWIMPS野田洋次郎の実家に対する取材は『紅白』出場直後の出来事だったが、今回、米津玄師にも同じことが繰り返されてしまった。
アーティストの実家にまで突撃取材をし、プライベートな領域にまで浸食してコメントをとることの正当性はどこにあるのか。そもそも、そのような記事が世に出る必要性はあるのか? 改めてマスメディアのモラルの見直しが求められている。
(倉野尾 実)
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