“男はつらいよ”がボリウッド映画になった!? 感涙作『バジュランギおじさんと、小さな迷子』
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『男はつらいよ』シリーズの主人公・寅さんが迷子の女の子と出逢い、彼女の家を探して旅を続ける。インド映画『バジュランギおじさんと、小さな迷子』のストーリーを、思いっきりざっくり説明するとそんな感じだ。“インドの寅さん”ことバジュランギおじさんは、根っからのお人よし。たまたま自分になついた女の子を連れて、インドの首都デリーから国境を越えてパキスタンまで700kmの旅をすることになる。行く先々で毎度のように大騒ぎを起こすが、最後にはみんなが“インドの寅さん”のことが大好きになる。お正月くらい、こんな映画を観てもいいんじゃないかという気にしてくれる、踊りあり、笑いあり、ホロリありの感涙作なのだ。
寅さんが柴又帝釈天(もともとはヒンドゥー教の武神)で産湯に浸かったように、バジュランギおじさん(サルマン・カーン)も信心深い。ヒンドゥー教徒である彼は、孫悟空のモデルとも言われる猿の神さま・ハヌマーンを信仰している。浅草の雷門みたいなところで、ハヌマーンを讃えて踊っていたバジュランギを見て、迷子の女の子シャヒーダー(ハルシャーリー・マルホートラ)は「この人は絶対にいい人!」と直感。バジュランギの後をついていく。困ったバジュランギは、シャヒーダーを警察に預けようとするも、彼女は口が不自由なため警察はまともに対応しようとしない。幼いシャヒーダーを放っておくこともできず、ひとまず下宿先へと連れて帰ることに。
下宿に戻ったパジュランギはびっくり。クリケットの国際大会のテレビ中継を大家一家と一緒に観戦していたところ、シャヒーダーはパキスタンチームが得点すると大喜びする。シャヒーダーはパキスタン人だった。しかも、シャヒーダーがモスクで祈りを捧げていたことから、イスラム教徒であることも発覚。国籍も宗教も異なるシャヒーダーの家を探そうとしていた自分のおめでたさに、愕然とするバジュランギだった。
寅さんにマドンナがいるように、バジュランギにも想いを寄せている美女がいる。下宿先の大家の娘ラスィカー(カリーナ・カプール)に男としての度量の大きさを見せようと、「ハヌマーンさまが見守ってくれるさ」と何の手掛かりもないままシャヒーダーを連れてパキスタンへ向かうことに。しかも、諸事情あって旅券もお金もないまま、パキスタンに密入国する。インドからのスパイに違いないとパキスタン警察に追われるバジュランギは、冒険を楽しむかのようにニコニコ顔のシャヒーダーの手を引いて、珍道中を繰り広げるはめになる。
“インドの寅さん”バジュランギは、旅を続けることでいろんなことを学んでいく。パキスタン警察から逃れるためにモスクの中に隠れようとするが、扉の前で一瞬ためらう。バジュランギは敬虔なヒンドゥー教徒だからだ。イスラム教の礼拝堂に、他教徒が足を踏み入れていいものかと。そんなバジュランギを、老司祭は「モスクはあらゆる人を歓迎します。誰でもいつでも入れるよう、モスクの扉は鍵が掛かっていないんです」と温かく迎え入れる。バジュランギが旅に出ることなくインドで平穏に暮らしていれば、ずっとそのままだっただろう、イスラム教徒やパキスタン人に対する誤解や偏見が少しずつ消えていく。そして、その分だけ、シャヒーダーの故郷へと近づくことになる。
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