大河『いだてん』にのんの名前がない理由…宮藤官九郎は圧力を受けるのんを応援し続けていた
1月6日より、宮藤官九郎が脚本を担当するNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』の放送がスタートする。
宮藤官九郎にとって初めての大河となる『いだてん』は日本が初めて夏期オリンピックに参加した1912年のストックホルムオリンピックから、1964年の東京オリンピック開催までの52年間を描く。明治以降の近現代のみを描く大河ドラマは33年ぶりとなる作品だ。
NHKと宮藤官九郎といえば、真っ先に思い浮かぶのが、2013年上半期の連続テレビ小説『あまちゃん』だろう。『いだてん』にも、小泉今日子、橋本愛、勝地涼、荒川良々、ピエール瀧、松尾スズキといった名前が並び、『あまちゃん』ファミリーが多く出演している。
『あまちゃん』ファミリー大集合の『いだてん』に「のん」の名前がない
しかし、そこに、「のん」の名前はない。
実は、つい先ごろまで、のんが『いだてん』に出演する希望を抱かせるような報道も出ていた。
10月19日に「FRIDAY」(講談社)が、のんと前所属事務所・レプロエンタテインメントの間で話し合いの場がもたれたと報じたのだ。
「FRIDAY」によれば、これはレプロとの関係修復を望むのん側から持ち掛けた話し合いであり、のんは前事務所に対して移籍に伴う騒動を謝罪までしていたという。
「FRIDAY」の報道によれば、この話し合いは『いだてん』出演に向けての調整であり、『いだてん』制作陣はのんを第二部の1936年ベルリンオリンピック編に登場させ、ドラマ中盤の目玉としてキャスティングしようという計画があると報じていた。
とはいえ、前途は多難なようだ。
「FRIDAY」のスクープの後、レプロ側は<能年氏から、過去についての謝罪と、弊社にマネジメントを再度依頼したい旨の要望があり、本人との面会に至りました。しかしながら、何ら解決には至っておりません。なお、当事者しか知り得ないはずの情報が事前に外部に漏れ、このような記事が出たことについては、大変不可解であり、誠に遺憾であります>とのコメントを出している。
そもそも、現在ののんはレプロとはなんの関係もないわけで、もしも、この話し合いが『いだてん』出演のための調整なのであれば、そのような話し合いが必要であること自体が、レプロ=バーニングによる圧力や、NHKによるバーニングへの忖度という、非常に醜悪な芸能界の構図を炙り出している。
宮藤官九郎は嫌がらせを受けるのんをずっと応援していた
ただ、ひとつ希望はあるのかもしれない。それは、宮藤官九郎がのんの独立に伴う圧力や嫌がらせの数々に批判的な言動を繰り返し行っているからだ。
そのひとつが、『あまちゃん』のVTR使用に伴う問題である。NHKはもちろん、他局のトーク番組などで『あまちゃん』のVTRが流れる際、のんの出演シーンだけ巧妙にカットして放送されるケースが続出したのだ。
たとえば、2016年大晦日の『第67回NHK紅白歌合戦』もそうだった。この年の『紅白』では、紅組司会が有村架純であったことから「有村架純「ふるさと」特別企画 あまちゃんの舞台 久慈を訪ねて」とのコーナーがもうけられた。
このコーナーは、有村が『あまちゃん』舞台の岩手県久慈市の中学校を訪れたVTRが流された後、NHKホールで紅白出演者が嵐の楽曲「ふるさと」を合唱するという、復興支援の企画だった。そのコーナーのオープニングでは、資料映像として『あまちゃん』の映像も流されていたのだが、そこにのん出演シーンは1秒たりとも含まれていなかった。
宮藤官九郎もこういった不可解なVTRの使い方を目撃したことがあるようで、「週刊文春」(文藝春秋)2016年7月7日掲載の連載コラムではこのように指摘していた。
<そう言えばトーク番組で『あまちゃん』の話題になり懐かしい映像が流れたのですが、映像使用の許諾が取れなかったのか、アキ(能年玲奈さん)がワンカットも映ってなかった。代わりに前髪クネ男(勝地涼くん)がガッツリ映ってて笑った。あまちゃんは能年さんの主演作ですよ、念のため>
その後、彼女はレプロから独立することになるが、結果として本名である「能年玲奈」という名前を芸名として使用することができなくなり、「のん」で再スタートを切ることになった。
その際にも宮藤官九郎は<のん。思い切ったなあ。渡辺えりさんは『えり子』の『子』を取るように美輪明宏さんに諭され随分悩まれたと聞きますが、彼女は『のうねんれな』の『うねれな』を取ったわけですから大手術。まあ、身軽になりたかったのかな>と冗談を入れたうえで、<あとは旧名時代を凌駕する代表作に巡り会えれば一気に浸透するんじゃないでしょうか。道のりは険しいでしょうが、のんさんの代表作が早く生まれるといいなと思います>とエールを送っていた(「週刊文春」2016年8月4日号/文藝春秋)。
公正取引委員会はタレントの事務所移籍制限を法的にも問題視
のんだけに限らず、SMAP、安室奈美恵、江角マキコ、清水富美加など、ここ数年、芸能事務所からの独立と、それに伴う業界からの嫌がらせが問題視されるケースが続出している。それを受けて2017年8月からは公正取引委員会からの調査が入り、2018年2月には公正取引委員会の有識者会議がタレントの事務所移籍を制限するのは独占禁止法違反にあたる可能性があると指摘する事態ともなっている。
「『いだてん』にのんがキャスティングされていない」ということが、もしも、レプロ=バーニングからの圧力や、その動きにNHKが屈しているという構図があるのだとすれば、芸能メディアも忖度のもとで黙っているのではなく、きちんと報じて、問題点を指摘すべきであろう。
(倉野尾 実)
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