『ボヘミアン・ラプソディ』異例の大ヒットと“ミーハーファン”に支えられた「クイーン」の真実
#映画
昨年下半期に大ヒットした映画といえば、世界的人気を誇る英ロックバンド・クイーンの軌跡を描いた『ボヘミアン・ラプソディ』(20世紀フォックス映画)。昨年12月23日の時点で、興行収入が62億3,576万7,480円、観客動員が453万3,806人に達するほどだ。ちなみに、この興収は昨年公開の洋画の中では、81億円の『ジュラシック・ワールド 炎の王国』(東宝東和)に次いで、第2位となる。
さて、今でこそレジェンド級のロックバンドの1つに数えられるクイーンだが、1973年にデビューした当初はアメリカはおろか、本国イギリスでも鳴かず飛ばずだった。70年代の日本における洋楽シーンをよく知る50代の音楽ライターは、次のように語る。
「比較的よく知られた話ではありますが、クイーンを世界で最初に評価したのが日本の洋楽ファンでした。ただ、その人気は主に女性ファンに支えられたものであり、クイーンは硬派な洋楽ファンからはキワモノ扱いされる存在だったんです」
70年代前半、コアな洋楽ファンはレッド・ツェッペリンやディープ・パープルといったハードロック、ピンク・フロイドやイエスといったプログレッシブ・ロックを好んで聴いていた。そうした人たちからすると、本国でも評価が低かった初期のクイーンは、音楽的にもビジュアル的にも異端でしかなかった。
「世界に先駆け、日本でいち早く人気に火がついたといっても、あくまでもミーハー人気だったわけです。とりわけドラムのロジャー・テイラーの王子様風のビジュアルは、女性ファンのハートをつかみました。当時の洋楽専門誌はプレーヤー別の人気ランキングが毎年掲載されていたのですが、テイラーは常に上位にランクインしていましたね。たぶん当時は、クイーンのファン層はベイ・シティ・ローラーズ(70年代に世界的な人気を博したイギリスのアイドルバンド)のファン層とも被っていたと思いますよ。もちろんクイーンの音楽性を評価した男性ファンも少ないながらも存在したのですが、マニアックな洋楽の世界ではファンであることを公言できず、肩身の狭い思いをしたはずです。日本で人気があったとはいえ、クイーンが音楽的評価を得るのには、それなりに時間がかかりました。こうした話は、新しいファンからすると、意外かもしれませんが」(同)
インターネットのなかった70年代は、欧米の流行がリアルタイムで日本に入って来なかった事情もあり、クイーンに限らず、本国で無名のバンドが突然日本で人気を集めたりするケースが少なからずあった。クイーンの現在の名声を考えると、日本のミーハーファンの嗅覚も捨てたものではないと言える。
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