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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > WEBドラマが若手女優の活躍の場に?
ドラマ評論家・成馬零一の女優の花道【番外編】

『放課後ソーダ日和』『宇宙を駆けるよだか』……WEBドラマが若手女優の活躍の場に?

『放課後ソーダ日和』ビジュアルカット

 2018年はWEBドラマに、見るべき傑作が多かった。

 過去にも、又吉直樹の小説をNetflixでドラマ化した『火花』やGYAO!で配信され、後に再編集版が前後編2部作で映画化された『女子の事件は大抵、トイレで起きるのだ。』など、優れた作品はあったが、昨年は作品数も充実していた。

 プラットホームもYouTube、Instagram、LINEといった無料で見られる場所や、Netflix、Amazonプライム、Hulu、Paravi、FODといった会員制の定額有料動画サービスまでさまざまだ。

 中でもWEBドラマ一番の主戦場となっているのが、YouTubeだ。松本穂香が地方で暮らす鬱屈したYouTuberを演じた『♯アスアブ鈴木』、人気YouTuberグループ・ボンボンTVの『最後のねがいごと』、LINE NEWSで配信された、のん主演の『ミライさん』など、1話あたり10分前後と短い、若手の女優やアイドルが主演を務めるドラマが多く、民放地上波から青春ドラマがなくなっている中、若手俳優や新鋭クリエイターが自由に力を発揮する場となっている。

 特に素晴らしかったのが『放課後ソーダ日和』だ。タイトルの通り、放課後に喫茶店でクリームソーダを飲むという、ささやかな楽しみを謳歌する3人の女子高生の日常を描いた青春ドラマである。

 1話10分弱、全9話と短い作品で、『孤独のグルメ』(テレビ東京系)などの食べ歩きドラマの女子高生版とでもいうような作品だ。登場する喫茶店とクリームソーダは実在するものであり、毎回、メニューと地図が出てくるので、喫茶店へ遊びに行くこともできる。

 枝優花が監督を務めた映画『少女邂逅』のアナザーストーリー的な作品で、本作も枝が脚本・演出・編集を担当。プライムタイムのテレビドラマと違い、予算規模は小さめだが、だからこそ小回りが利くため、作家性の強い作品となっている。

 出演は森田想、田中芽依、蒼波純の3人だが、それぞれ、本人の個性と演じる役がリンクしている。中でも面白かったのが蒼波の見せ方だ。

 彼女は独特の存在感がある女優で、常に自然に振る舞っているため、良くも悪くも浮き上がってしまうのだが、そんな蒼波の“浮き上がってしまう存在感”が、うまく役柄に反映されていた。

 蒼波が演じるムウ子は、ある事情でしゃべることを拒絶して、スマホの人工音声で会話する、メガネに三つ編み姿のどんくさい女の子。友達ができたことで、自分の言葉でしゃべれるようになっていくのだが、あえてあまりしゃべらせないことで、繊細な表情の変化に現れる蒼波の魅力を引き出していた。

 彼女たちの悩みは、大人からは他愛のない、ほほえましいものに見えるが、10代の女の子にとっては、とても切実なもの。だからこそ、ドラマチックな展開はほとんどないのに、見ている側に訴えかけてくるものがある。

 羊文学の主題歌「ドラマ」も、素晴らしい切実な輝きを持った宝石箱のような作品である。

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