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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 映画  > 平成日本映画界10大事件!!

平成30年、世間を騒がせた日本映画界10大事件!! 宗教映画の跋扈、お家騒動、伝説の大コケ映画……

7)名監督のミステリアスな最期

 1980年代~90年代中期の日本映画界は、収面での低迷が長く続いた暗黒時代だった。そんな中で孤軍奮闘の活躍を見せたのが、個性派俳優から映画監督へと転身した伊丹十三だった。51歳にして『お葬式』(84)で監督デビューを果たし、グルメものの先駆作『タンポポ』(85)、業界の裏側を軽妙に描いた『マルサの女』(87)などユニークな作品を続けざまにヒットさせた。日本映画界を代表するヒットメーカーとなった伊丹監督だが、1997年12月20日、伊丹プロダクションのある都内のマンションの下で遺体となって見つかった。

 遺書があったことから警察は飛び降り自殺と断定。しかし、暴力団対策法の施行に合せて製作された『ミンボーの女』(92)の公開直後に5人の暴漢に襲われて負傷、さらにそのときの体験をもとにした『マルタイの女』(97)が公開されて間もなかったことから、暴力団関係者を刺激しすぎたのではないかなどの憶測が乱れ飛んだ。

 伊丹監督は64歳でその生涯を終えたが、多くのフォロワーを生んでいる。『マルサの女』のメイキングを担当した周防正行監督は『ファンシィダンス』(89)で一般映画デビュー、『マルタイの女』に企画協力した三谷幸喜は『ラヂオの時間』(97)、『大病人』(93)の臨死体験シーンを担当した山崎貴は『ジュブナイル』(00)でそれぞれ監督デビュー。黒沢清監督は『スウィートホーム』(89)のビデオ版の著作権をめぐって伊丹プロと裁判沙汰となったが、彼もまた伊丹監督が早くから才能を認めた一人だった。伊丹監督がその後の日本映画に与えた影響は少なくない。

6)伝説となった平成トホホ映画

 佐藤純彌監督の『北京原人 Who are you?』(97)と並ぶ、伝説の大コケ映画として好事家たちの脳裏に刻まれているのが那須博之監督の実写版『デビルマン』(04)だ。平成トホホ映画を決めるアンケートを実施したら、この2本は確実にランクインするだろう。『ビー・バップ・ハイスクール』(85)をヒットさせた那須監督は、永井豪のカルト漫画を学園青春映画として撮り上げるつもりだったらしい。だが、公開を遅らせてまで完成させた映画は、見せ場であるデビルマンと宿敵サタンとの対決シーンがいきなり2Dアニメになるという斬新すぎる演出で、観客たちを仰け反らせることになった。製作費10億円に対し、興収はその半分だったと言われている。ビートたけしは「第14回東京スポーツ映画大賞」において「これは『みんな~やってるか!』『シベリア超特急』『北京原人』に続く映画史に残る4大おバカ映画」と評し、特別映画賞を贈った。

 DVDで『デビルマン』を久しぶりに見直してみた。確かに演技経験のないまま主演に抜擢された不動明・飛鳥了役の伊崎央登・右典兄弟の芝居はトホホすぎ、彼らを追うカメラもおざなりだが、意外なキャストの出演シーンだけは熱が感じられた。原作ではデーモン化した両親にあっさり殺されるススム少年を子役時代の染谷将太が演じており、人類滅亡という絶望の世界をミーコ(渋谷飛鳥)と共に生きていくことになる。染谷と渋谷の出演パートには、スタッフもかなり力を入れていたことが画面から伝わってくる。那須監督は『デビルマン』公開の翌年2005年に肝臓がんで亡くなった。染谷の将来に、明るい希望を感じていたのではないだろうか。

5)邦画バブルに沸き、そして沈んだゼロ年代

 フジテレビの人気ドラマ『踊る大捜査線』の劇場版第2弾『踊る大捜査線THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(03)が実写邦画歴代1位となる興収173.5億円を記録。長澤まさみが大ブレイクした『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)は85億円の大ヒット。テレビ局を中心に映画会社、出版社、DVDメーカーなどが出資しあう「製作委員会方式」がゼロ年代にはすっかり定着し、人気テレビドラマやベストセラー小説の映画化が相次いだ。

 邦画ブームに活気づく中、独立系映画会社シネカノンも『パッチギ!』(04)、『フラガール』(06)などのヒット作を放ち、“準メジャー”と称されるほどの勢いを見せた。シネカノンはジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC)と提携し、2006年から映画ファンドを始めたが、JDCは不正流用を金融庁に指摘されて行政処分に。シネカノンは2010年に総額47億円3000万円の負債を抱え、東京地裁に民事再生法の適用を申請することになった。

 2008年には『純喫茶磯辺』(08)のムービーアイ、2010年には『日本以外全部沈没』(06)のトルネード・フィルム、2013年にはトニー・レオン、前田敦子らの出演を予定していた『一九〇五』の製作を進めていたプレノンアッシュが破産。邦画バブルに沸いたのも束の間、映画業界に再び冬の時代が訪れた。

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