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壮大な会社コントとして終わった第2シリーズ!! ブラック企業と紙一重な『下町ロケット』最終話

■過去の人気番組を貪欲に取り入れた下町ブランド

 最終話がオンエアされた12月23日は、折しも毎年恒例となっている「ブラック企業大賞」の発表が行われました。平成最後の年となる2018年の「ブラック企業大賞」に選ばれた不名誉な企業は、三菱電機でした。システム開発者や研究職の男性社員5人が、長時間労働が原因で精神障害や脳疾患を発症し、そのうち2人が過労自死を遂げています。「佃製作所」も一歩間違えればブラック企業に認定されかねません。社員が一致団結するのは悪いことではありませんが、残業を断れず、有休も申請できない雰囲気の職場はダメだと思います。

 要は職場のトップ次第でしょう。軽部の上司である山崎部長(安田顕)は軽部の家庭事情を理解していましたし、佃社長も社員それぞれとコミュニケーションを図って、職場の風通しはよさそうです。社会に役立つモノづくりを理想に掲げる佃社長がいることで、給料はなかなか上がりそうにない「佃製作所」の社員たちも不満を漏らさずに済んでいるようです。他人がどれだけ給料をもらっているかを気にするだけの人生では、寂しすぎます。企業名が有名かどうかではなく、働きがいのある職場かどうか。そんなシンプルな問いを『下町ロケット』は投げ掛けているようです。

 イモトアヤコ、古舘伊知郎ら俳優を本業にしていないタレントやフリーアナウンサーたちの起用が目立った『下町ロケット』第2シリーズ。ストーリー展開がやたら速く、バラエティー番組を見ているかのような騒々しさがありました。最終話がまるでコントのようだったこともあり、TBSの往年の看板番組『8時だヨ! 全員集合』の世界を彷彿させました。いかりや長介率いるザ・ドリフターズが笑いに貪欲だったように、『下町ロケット』も面白いドラマをなることに貪欲でした。

 勧善懲悪の分かりやすい世界観は『水戸黄門』(TBS系)、農林協の職員・吉井(古川雄大)のような嫌味なキャラが続々と登場する展開は『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)、中島みゆきの名曲が感動シーンに流れる演出は、『プロジェクトX』(NHK総合)からのいただきです。最終話には『ウルトラセブン』(TBS系)の森次晃司がゲスト出演しました。ベタと思われようが、かつてお茶の間に集まった家族がみんなでテレビを楽しんでいた、そんな古き善き時代のエンターテイメント番組への回帰を目指していたように思われます。「古きを学び、新しきを知る」、それが『下町ロケット』だったのではないでしょうか。

 佃社長たちが情熱を注いだ改良型ロボットが、的場のロボットに性能テストで圧倒的勝利を収めたことで幕を閉じた最終話。的場は「設計思想が古い」と第三機関からダメ出しされるおまけつきでした。そして、最終話の気になる視聴率は16.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)。第1シリーズの最終回22.3%には及ばなかったものの、第2シリーズでは最高視聴率となり、1月2日(水)にオンエアされる本当の最終回「新春ドラマ特別編」への期待をつないだかっこうです。

 また、『下町ロケット』の福澤克雄チーフディレクターが監督した池井戸潤原作の映画『七つの会議』が2月1日(金)から全国公開されることも決まっています。『下町ロケット』では大企業「帝国重工」の融通の効かない保守的な体質が下請けである佃社長たちを苦しめましたが、『七つの会議』はそんな大企業の問題体質にメスを入れる社会派サスペンスとなっています。『下町ロケット』でアキを好演した朝倉あきがヒロイン役で出ているのもチェックポイントです。アキが握ってくれたおにぎりを頬張る夢を見て、平成最後の新年を迎えたいと思います。それでは、みなさんよいお年を。
(文=長野辰次)

最終更新:2018/12/25 20:00
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