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日刊サイゾー トップ > 社会  > 対馬比田勝港からの“限界出国”

日本人のほうが少数派な国境の港町・対馬比田勝港からの“限界出国”

あちこちにツシマヤマネコのキャラクターはいるけれども本物は全く見ることが出来なかった

「日本人? 東京から? 何しにきたの?」

 まだ、日本国内なのに、そんな質問をされてしまった。それが、対馬の港町・比田勝の現在である。

 過疎ですっかり沈んでいた比田勝は、今では対馬の中でもっとも栄える地域である。そこを訪れた人はだいたい「日本人が珍しがられる」という。

 それは、比田勝が韓国人がもっとも気軽に訪れることのできる日本になっているからである。

 今や、比田勝にはJR九州の運営する高速船のほか、韓国企業4社の高速船が、毎日入港する。

こちらがJRの運営する高速船。まったく海外旅行って雰囲気がしないぞ

 この比田勝というのは、対馬の中でも本当の最果て。博多からの航路のメインである厳原に比べ、日本本土からの航路は少ない。そして、対馬の中心市街である厳原からはバスで2時間以上かかる。天気のよい日は、海を挟んで50キロ程度の釜山の街が見える国境の港町。

 そのあまりの近さゆえに、韓国人にとっては「もっとも手軽に訪れることのできる日本」になっているのである。

 そんな街へ行くために、筆者は厳原から午前7時過ぎに出発する朝一番のバスに乗車。

待ち構える観光バス。ガイドの人は、毎日、釜山との間を往復しているらしい。毎日が海外旅行ってすごいな

 韓国船は午前中に入港、夕方に出発便が大半。日帰りでも買い物ができるように、こんな設定になっているようだ。

 さて、午前9時半近くに到着した比田勝国際ターミナル。韓国航路の需要増を受けて新築されたターミナル周辺は、すでに韓国であった。ターミナル前や、その周辺にある商店にはハングルばかり。駐車場には、観光バスが10台近く停車しているし、ターミナルの中も外も、韓国人しか歩いていない。

 やがて、釜山から船が到着すると、早足でやってきたガイドらしき男性が、流暢な日本語で、待っていたバスの運転手に「今日も、よろしく!」と挨拶をしている。なるほど、この人は、毎日、釜山から客を運んで来るのが商売なのか。毎日、パスポートに出入国のスタンプが押されていくのは、いったいどんな気分なのか……?

 ともあれ、筆者が予約していた高速船の出港までは数時間。まずは、時間を潰そうと近くの商店に入ったら、言われたのが冒頭の言葉。

 韓国人の買い物客で店は賑わっているが、ここまで来る日本人は、ほとんどいないという。ちなみに、最近、韓国人に人気の商品は何かと聞くと「蒟蒻畑」だそうだ。そして、入ってくる韓国人にも流暢な韓国語で話をしているのだ。

スパムおにぎりも人気だそう。ちなみに、釜山港のコンビニには日本人が群がっていた
なぜか、蒟蒻畑が韓国人には大人気。次点でうまい棒もよく売れているという

 とにかく、韓国人相手の商売で儲かっているほうの人は、この状況を歓迎している様子。でも、そうでないほうの人々の認識は、まったく違う。

 タバコを買おうとして入った古めかしい商店で話をすると「うちは、まったく関係ないね」というのだ。そして、近所に出来たパン屋を指さして「あそこも、韓国人が始めて、日本人を雇って使ってる……」と、複雑な表情。まったく自分の商売に結びつかない以上は、単によそ者が増えて煩わしいということか。

 国境の港町と発展しながらも、さまざまな対立軸が存在していることを感じさせられた。

完全に雰囲気が韓国仕様のコンビニ。そもそも日本人の客なんて考えていない

 ……さて、比田勝から出国した筆者は、釜山で一泊した後、関釜フェリーで折り返した。

 ちょうど休日ということもあってか、こちらは日本人も多かった。多くが山口県や福岡県から来たという人だったが、日常的に釜山に買い出しに出向いている人も多いようで「半年分の韓国海苔を買った」などと、段ボール箱をキャリーで運んでいる人も多かった。

 なお、比較的スムーズに進んでいた下関港の税関だが、筆者の番になると「東京から、比田勝経由で出国? これからどこに行くんです?」と執拗に聞かれ「金とか、運んではいけないものを持っていませんよね?」と。

 いったい、何がそんなに怪しかったのだろうか。
(文=昼間たかし)

最終更新:2018/12/22 18:00
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