モンスターを生み出したのは18歳の少女だった!! “怪物たち”が目覚めた夜『メアリーの総て』
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フランケンシュタイン・コンプレックスという言葉がある。神のような創造主になることに憧れた人間が科学の力で新しい生命を創造するが、生まれてきた新しい生命体に恐怖を覚えてしまうという屈折した心理を現わしている。イギリスの古典的ホラー小説『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』から生まれた言葉であり、ロボット・遺伝子操作・原子力エネルギーといった現代科学の産物は、どれもフランケンシュタインの怪物の末裔たちと言えるだろう。創造主の愛情を感じることなく、この世に生命を授かった怪物たちはそれでも生きていかなくてはならない。
1818年に刊行された『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』の著者はメアリー・シェリー。執筆時18歳の女性であり、その処女作の内容があまりにも衝撃的すぎたため、彼女の名前は初版本にクレジットされることが許されなかった。エル・ファニング主演作『メアリーの総て』(原題『MARY SHELLEY』)はメアリー・シェリーの生涯を追うことで、彼女が産み落したフランケンシュタインの怪物の正体を解き明かしている。
映画『メアリーの総て』の主人公であるメアリー(エル・ファニング)は、墓場を愛する少女だった。メアリーが墓場好きなのには理由があった。人影の少ない墓場は、静かで思索するには最適な場所だった。また、メアリーの母親ウルストンクラフトはフェミニズムの先駆者として知られていたが、メアリーを産んですぐに亡くなった。記憶にない母親への思慕からメアリーはしばし墓場に佇み、現実世界と異界との狭間を漂うことを楽しんだ。
メアリーの父親ウィリアム・ゴドウィンも著名な作家だったが、妻ウルストンクラフトが亡くなった後は、再婚して書店を営んでいた。メアリーは継母とは折り合いが悪く、家の中に居場所のないメアリーはますます墓場で過ごす時間が長くなっていく。
そんな墓場好きなメアリーは墓場で恋に墜ちる。スコットランドで知り合ったロマン派の若き詩人パーシー・シェリー(ダグラス・ブース)が、メアリーを追ってロンドンまで訪ねてきたのだ。墓場で愛を確かめ合うパーシーとシェリーだったが、3歳年上のパーシーには妻と子どもがいた。しかし、障害があればあるほど恋愛は燃えるもの。16歳だったメアリーは父親の家を飛び出し、パーシーと駆け落ち。若い2人は世間のモラルに従うよりも、情熱に身を捧げる人生を選んだ。シェリーの奔放な生き方に共感する、継母の連れ子クレア(ベル・パウリー)も2人と行動を共にする。
恋の炎が激しく燃え上がるのは、当然ながら最初だけ。一緒に暮らし始めると詩人であるパーシーには経済力がなく、裕福な実家からの資金援助に頼る身だったことが分かる。さらに“自由恋愛”を謳うパーシーと義妹クレアとの関係がどうも怪しい。夢見た甘い新婚家庭とはまるで異なる現実生活だったが、そんな中でシェリーは長女を出産。愛情を一途に注ぐ対象を見つけたシェリーだったが、長女は生後間もなく病死してしまう。借金取りに追われるパーシーにせっつかれ、冷たい雨の中を夜逃げしたことが原因だった。メアリーは18歳ながら、身も心もすっかりボロボロとなる。
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