『下町ロケット』第10話 下町の舞台・大田区を襲う蒲田くんを迎え撃て!! 明かされた軽部の素顔
#ドラマ #TBS #下町ロケット #阿部寛 #どらまっ子
■ドラマと現実世界をつなげたクボタのCM
裏番組の『シン・ゴジラ』では「佃製作所」の所在地である東京都大田区にゴジラの第二形態である“蒲田くん”が上陸し、下町をメタメタに蹂躙します。一方の『下町ロケット』も大変な事態を迎えました。記録的な大豪雨という自然災害が、新潟県燕市を襲ったのです。元「佃製作所」の経理部長・殿村(立川談春)は実家の田んぼの稲刈りを間近に控えていたのですが、成す術なく稲は全滅してしまいました。脱サラした殿村があれだけ苦労して育て上げたのに、たった一夜の大雨がすべてを奪い去ったのです。自然と触れ合いながら、田舎生活を満喫していた殿村は、農業で食べていくことの恐ろしさを身を持って体感したのでした。
さらに自然災害以上に恐ろしいのが、田舎の人間関係です。農業法人に参加することを断り、独自ブランド米の販売を続けてきた殿村に対し、農林協の職員・吉井(古川雄大)は容赦ありません。本年度の収穫ゼロとなった殿村が農林協に500万円の融資を申し込むと、窓口に現われた吉井は「農業法人に入らないから、こんなことになったんですよ」とニヤニヤ顔で対応します。勝手なことをするから、災害に遭ったのだと言わんばかりです。ブランド米を止めて、今後はこちらに服従するなら融資を考えるという悪代官ぶりです。閉鎖的社会の恐ろしさがまざまざと描かれます。
さまざまな悪役が登場する『下町ロケット』ですが、殿村家を村八分扱いする吉井は最上級のゲス野郎です。殿村が絶望しながら去った後、吉井の上司が「農林協は農家の人の助けになるためにあるんだ」とフォローを入れましたが、もっとしっかり部下の仕事内容をチェックしてほしいものです。しかし、ここまで嫌な奴は、役とはいえなかなか演じられるものではありません。古川雄大はミュージカルの舞台というホームグランドがあるからこそ、徹底して悪役を演じられるのでしょう。舞台とテレビの仕事をうまく使い分ける、古川雄大のクレバーさにも恐れ入ります。
第10話では、CM中に他局にチャンネルを変えられないための秘策も投じられました。クボタが開発して実用化に成功した「アグリロボトラクタ」の勇姿がCMとして流れたのです。『下町ロケット』の世界が現実化したようなリアルな映像で、CMかドラマなのか分からないほどでした。日本の農業を守りたいという佃社長や財前部長たちの願いが現実のものになりつつあることに、驚きを覚えた第10話でした。
驚いたといえば、軽部が結婚して、娘もいたこともショックでした。軽部には根っからの変人でいてほしかったなというのが、正直な思いです。残業は頑なにやらない頑固者であっても、「佃製作所」は活躍できる理想の職場であってほしかったからです。サービス残業以外にも、会社に貢献できる方法はあると思います。まぁ、社員が自主的に黙々と残業する姿を映すことが、テレビドラマとしては分かりやすい盛り上げ方なのでしょう。日本に本当の意味での「働き方改革」が浸透するのはまだまだ先のことのようです。
分かりやすい盛り上げ方に徹したことで、15分拡大スペシャルだった第10話の視聴率は15.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と、第8話の11.5%、第9話の12.6%からグ~ンと数字を伸ばしました。次週の最終回は、前シリーズの最終回22.1%にどこまでまで迫ることができるのでしょうか。首相の前で実演が行なわれる小型ロボット「ダーウィン」と進化を遂げて生まれ変わった「アルファ1」とのリターンマッチの行方に注目です。
(文=長野辰次)
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