ヒップホップ界とフォーク界の“異端児”が、すき焼き店で邂逅~5lack×前野健太対談【前編】
#インタビュー
■日本語が拡張して、新しい何かになる感覚
前野 僕、UNDERCOVERのイベントで観た5lackさんのライヴに、衝撃を受けたんです。日本語が拡張しているように感じた。言葉が新しいものになっていくというか。
5lack 前日のカラオケの段階から、マエケンさんは造形的な表現で俺のことを褒めてくれてましたね。「抑えられたテンションがここでこう来て、スッと入ってくる感じ」みたいな(笑)。
前野 5lackさんがillionとの曲「Hilight」を歌ってたんですよ。その歌詞がすごくカッコよかった。存在も詩人なら、歌詞も詩人だなって。さらにライヴを観て、音楽や言葉を通じてあぶり出したいものが自分とかなり近い人なんだなって思えたんです。正直な話、戦慄が走りましたよ。それくらい良かった。僕はこれまで言葉が持つ音よりも、その意味のほうを大切に、たぶん歌詞を書いていたけど、5lackさんは言葉を引き伸ばしたり、すっ飛ばしたりしてて、日本語で遊んでる感じがした。言葉の持つ可能性を、もっと広げてると思ったんです。
――前野さんは『サクラ』をリリースした際のインタビューでも、「これまでは作詞する上で意味にとらわれすぎてる部分があった」と話していましたね。
前野 そうですね。個人的にここ何年か自分の課題だと思っていたことを、5lackさんはライヴでドンピシャに体現していたんです。しかも、僕は前日のカラオケではしゃぎすぎて、ボロボロに燃え尽きていたんですよ(笑)。だから余計効いた。だって僕、夕方までホテルから出られませんでしたからね。
5lack 実は俺、マエケンさんが酔っ払って帰る様子を、こっそり見てたんですよ。俺も酒が好きだから、マエケンさんが酒でボロボロになるのを見て、ちょっとホッとしてて。「あっ、こっち側の人なんだ」みたいな(笑)。ヒップホップの人ってすごいお酒飲みそうな雰囲気だけど、実際には全然飲まない人が多くて。特に若い子とか。それが内心ちょっと寂しかったんですよね。
前野 そうなんだ。僕はいつもあんな感じなんですよ。後日、ジョニオさんに、5lackさんと僕が肩組んで歌ってる写真を見せてもらったけど、まったく記憶になくて。正直「またやっちゃったなぁ」って落ち込んでたんです。初対面のお酒の席でめちゃくちゃ絡んで、翌日ドン引きされることがよくあるんで。そしたら今回対談のお話をいただいて、驚いたと同時にホッとしたんですよね。「嫌われてなかったんだ」って(笑)。
(後編へ続く/取材・文=宮崎敬太)
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