トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『サチコ』本物の“俊吾さん”が登場

『忘却のサチコ』グルメドラマなのに展開が気になるなんて……ついに本物の“俊吾さん”が登場!

■ついに、俊吾さん登場

 入浴後、牛乳を飲みながら幸せそうに佇むサチコの前に現れたのは、例の「俊吾さん」かもしれない従業員。

 結論からいうと、この俊吾さんは本人だ。気付いた幸子のすっぴんが固まる。

「す、すいません……」と気まずそうに立ち去ろうとするリアル俊吾さんを「あの……!」と呼び止め、ようやく絞り出た続く幸子の言葉が「……お元気でしたか?」。

 かつて24時間テレビで前人未到の200キロマラソンを終え、ゴールしたばかりのヘロヘロの間寛平に向かって「初めまして、裕木奈江です」と自己紹介を丁寧にかました女優・Yを一瞬思い出したが、それはさておき、ドラマを見続け保護者目線になってきてる我々視聴者には、この幸子の不器用さがたまらなく愛おしい。

 何を聞いても「ごめん」としか言わない俊吾さんに対し、

「お会いして早々大変お聞きにくいことをお尋ねしますが~」

「このようなことは申し上げたくはございませんが~」

 と、いつもの幸子より声をやや荒らげながらも、いつもながらの丁寧さを保持しようとする幸子に胸を打たれる。

「仕事が終わったらちゃんと全部話すから」と、0時に焚き火のあるリビング(ホテルのロビーにある)に来てくれと言い残し、俊吾は消えていった。

 夏の日に2人で花火をした記憶を蘇らせながら、焚き火を見つめる幸子。結局俊吾は来なかった。

 幸子の宿泊部屋のドアの下に置いてあった俊吾からの手紙。

「すまない。やはりまだあの日のワケを話すことはできない。ごめん」

 さらに「この手紙を読む頃にはもう僕はこのホテルにはいません。だから探したりはしないでください。本当にごめん。」とつらい内容が。

「どうして……なんで……」と俊吾さんを責めるような口調から一転、「なんでまた行っちゃうの……」と泣き声になるかならないかくらいの掠れた声を絞り出し、気持ちを決壊させ膝をつく幸子。

 我々が思っていた以上に幸子は俊吾さんのことが今でも好きだし、全然『忘却』なんてできちゃいなかった。

 いろいろ笑って見ていたあげく、それを少し申し訳ない気待ちにさせられるなんて、なんだか悔しい。

 その直後一発目のCMで「クリスマス、ケンタッキーにしない?」とパーティーバーレルを抱え笑顔で微笑む幸子、もとい高畑充希。

 もう炭火焼のことすら忘れてしまってるようで、それも悲しい。

 

■温水洋一が男前に

 眠れずに迎えた翌朝。

「こんなときにも」と腹の音が鳴る幸子は、訪れたうどん屋でタクシードライバーと再会。「行きましょ行きましょ」と店内へ連れ込まれる。

 根掘り葉掘り聞いてきたり、つまらない冗談を言ってきたり、リアルな生活で出会ったらきっと鬱陶しく感じてしまうタイプの人かもしれないが、一晩でいろいろ通過し、昨日とは違う景色を見てる幸子には、変わらず接してくる運転手のズケズケさが心地いいに違いない。

 2人で「天玉かうどん」をすする。

 丸天という蒲鉾を揚げた「天」。

 玉子の「玉」。

 天カスの「か」。

 で、「天玉か」。

 うどんの説明をしてくれるだけなのに、温水が昨日より男前に見える。

 讃岐より全然柔らかく、「腰ゼロのうどん」。

 讃岐ブームのおかげで、逆に大阪や福岡、宮崎の柔らかいうどんにも注目が集まるようになった。

「宮崎の人はこの柔らかくてあったかいうどんが大好きなんです。これ食べて、元気をつけて、こっから今日1日を始めるとですよ」

 人間は、口に入れたものからしか身体を作ることはできない。

 柔らかい麺をすすり、汁を飲む幸子は、今回は『忘却』していないように見えた。

 それは美味しくなかったからではなく、忘れずに生きていこうと決めたからではないか。

 そうなるとこの番組が成り立たなくなるのだが、それくらいいい顔をしていた。

 ちなみに原作漫画で俊吾さんと出くわすのは宮崎ではなく、岩手は花巻の湯治場。

 真実を話すからと約束した待ち合わせ時間は、0時ではなく朝の4時。

 さすがに明け方まで待たせて消えているんじゃ鬼畜すぎるから、早めの時間に変えたのだろうか。

 しかし、俊吾さんの、やはりまだ話せない「理由(ワケ)」とは何なのか?

 いつも思い出すのは、フニャコフニャ夫の「ライオン仮面」(ドラえもん)。結末を決めずに展開を引っ張る漫画家(フニャコ)が毎週連載の執筆に困る話だが、作者(阿部潤)は、どこまで見据えて俊吾さんのことを先延ばしにしてるのか心配になる。

 いや、そこを気にするタイプの漫画ではないのは百も承知だが、原作以上にいじらしく真っ直ぐなドラマの幸子に親心を抱くたびにそう思ってしまうのだ。

 俊吾はホテルの従業員仲間に、宮崎に来た理由を「大切な人を傷つけてしまって」(原作では裏切ってしまって)と言っていた。今でも「大切な人」であるのは本心だろう。

 そろそろ佳境を迎えるドラマ終盤、どうまとめるのか。

 原作は連載中だし、ドラマも好評なので、続編を作るためにまだ引っ張ると思われるが、どこまでを描くのか。

 グルメドラマで展開を気にすることになるなんて、悔しいけど続きが楽しみです。
(文=柿田太郎)

 

最終更新:2018/11/30 16:00
12
ページ上部へ戻る

配給映画