“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士が『ボヘミアン・ラプソディ』を大絶賛!「過去最高!」と評したワケは……
#インタビュー #瓜田純士
――ライヴのシーンはいかがでしたか?
純士 メンバーと共にバックヤードからステージに向かうあのパターン、よくあるっちゃあるんだけど、そこに至るまでの熱気とか緊張がビンビンに伝わってきました。まさにフレディの横にいる気分。CGを使ってるのか全部エキストラなのか知らないけど、空撮も交えた客席の盛り上がり方も圧倒的で、映画館にいるこっちまで興奮した。もちろん、すべては「楽曲のよさ」あっての興奮だけど。曲の生誕にまつわる裏話も知ることができたし、字幕で歌詞の意味を知って泣けるシーンも多々あったわ。
麗子 ウチも1曲目から込み上げてくるもんがあって、途中からは震えながら泣いてたわ。映画としてもテンポがめっちゃよくて、それでいて内容も濃いから、最後まで飽きへんかった。映画って、2時間のうち必ず飽きるとこがあるねんけど、今回なかったってことは、これは1曲のミュージックビデオみたいなもんで、フレディの生涯は音楽やねん。しかも彼にとって音楽は仕事やなく、命やねんな。
純士 映画『アマデウス』にちょっと近いかも、とも思った。モーツァルトの破天荒な生涯が描かれてるんけど、流れる音楽は天才そのもの。それを見てる感じでした。あと、これは監督の意図じゃなく、実際のライヴがそうだったのかもしれないけど、最後、持ち時間20分のトリに表題曲がくるかと思いきや、そこを裏切る曲順だったじゃないですか。しかも、例のオペラのフレーズを切ったあたりが、オシャレだなと。大トリで表題曲がかかって例のオペラも全部やっちゃったら、予想通りで面白くなかったと思います。
――今のところベタ褒めですが、不満点は?
純士 不満ってわけじゃないけど、一箇所だけ「ここは美化したかな」と感じたのは、元嫁のメアリーが夢を見て、クスリでヨレてるフレディの元を訪れる場面。あれ、実際は来てないんじゃないでしょうか。再婚して子どもまでできてたら、さすがに元旦那のところには行かないんじゃないか。あれは脚色じゃないかな、と感じました。まあでも、そのシーンがあったおかげで、フレディの孤独さがより一層浮き彫りになったし、裏切り者と縁を切って仲間の元へ戻るシーンにつながるわけだから、脚色だとしてもアリなんですけどね。
麗子 ウチはあのシーン、自己投影しながら見てたわ。実は今朝、夫婦喧嘩をしたんですよ。そやからウチは、タクシーに乗ってメアリーが去って行くシーンを見ながら、「純士が『こうなりたくない』と思って心を改めてくれればいいのに」と思いました。
純士 全体的に文句のつけようがない作品でしたが、メアリーに対してだけは文句を言いたい。窓辺の電気をつけて乾杯するっていう約束事のとき、気のないそぶりを見せやがって。気持ちはわからないでもないけど、せめてもっと近くにいてあげろよ! フレディが可哀想だろ! と思いました。
麗子 あれはしゃあないで。紀州のドンファンの嫁みたいな性格やったら、たとえ気持ちがなくても、お金で割り切って仮面夫婦を続けることもできたんやろうけど、メアリーは心が綺麗やから、そういう関係を望まへんかってんやろ。そこがウチ的にはよかったわ。
純士 フレディは一途だったんだね。あれだけの大スターだったら、もっと色恋があるはずなのに。
麗子 いやいやいや、じゃあ、なんでエイズになるん?(笑) 映画では描いてへん部分もあるんやって!
純士 あの時代、どういうセクシャリティーの主張の仕方があったのかわかんないけど、あんなヒゲ同士でくっつくもんなんですか? あれが当時の合図だったんですか? あのフレディにケツを触られたお手伝いの男、いい味出してましたけどね。「今度触ったらブン殴るぞ」とか言っときながら、最後ちゃっかりステージ脇に行くまでの仲になってるという(笑)。「お前誰だよ」みたいな。
麗子 ニヤニヤしとったもんな。どっかの演歌歌手みたいな顔して。
純士 フレディがエイズであることをメンバーにカミングアウトするタイミングもよかったし、あと、フレディのお父さんもよかったな。息子のことを、ひそかに応援してる感じが。しかし、ああいう家庭に育った子が、あれだけの世界的スターになっちゃうんだから、本当にすごい話だよね。
麗子 アメリカンドリームやな。
純士 まあ、イギリスなんだけどさ。
麗子 イギリスかーい!(笑)
――では、そろそろまとめのコメントをお願いします。
純士 メンバーも家族も、元嫁もその恋人も、裏切り者もレコード会社のお偉いさんも、エイズをカミングアウトする前から「大丈夫なのか?」とフレディの一挙手一投足を見守ってる感じで終わった2時間でした。そこに真意が詰まってるというか、本当はそれだけ愛されてたのに自分から孤独になっていったんでしょうね。だから最後、受け入れられてよかったですよ。ドラマーあたりが怒って「お前とはやれない」とならなくてよかった。いやぁ、やっぱ、バンドの映画は面白い!
――日本でBOØWYの映画とかを作ったら、どうなるでしょうね?
純士 邦画のバンドものだと最近、『キセキ-あの日のソビト-』っていうのをDVDで見たんですよ。GReeeeNの「キセキ」の誕生までの実話を元にした物語なんですけど、イマイチでした。なんでこんなに違うのか? それはきっと、売れ方のレベル違うからじゃないかと思います。スーパースターの暮らしぶりや、見えてる景色が日本と海外とでは全然違うから、作品のスケールも違ってきちゃうのかな、と。
――なるほど。
純士 GReeeeNはさておき、クイーンを聴いてこなかったことはマジで恥じてます。今日から大ファンになりました。
麗子 ウチもや! フレディが生きてる間にクイーンをちゃんと聴かへんかったとは、なんて薄っぺらい人生を歩んできたんやと反省してます。
純士 こんな世界的なロックスターを知らずに、俺はアマチュアバンドでステージに立ったとき、観客に向かって「お前らロック好きか? ロックが好きならこの曲知ってるだろ? 行くぜ!」とかほざきながら、手垢のつきまくった邦楽のカバーを演ってたんですよ。「てめえが一番ロックを知らねえんじゃねえのか? てめえが知ってるのはヤーさんの世界だけだろ!」と、観客は心の中で突っ込んでたかもしれませんね(笑)。
(取材・文=岡林敬太/撮影=おひよ)
『ボヘミアン・ラプソディ』瓜田夫婦の採点(100点満点)
純士 100点
麗子 100点
※今回から採点機能が加わりました。過去回の採点も記事一覧からご覧になれます。
※「“キングオブアウトロー”瓜田純士、かく語りき」の記事一覧
https://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/
※瓜田純士のYouTube好評配信中!(瓜田純士プロファイリング)
https://www.youtube.com/channel/UCv27YAy0FZ-4wwisy5zPmeg
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