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『下町ロケット』第6話 悪役たちが“顔面パレード”する後半戦スタート!! 変人・軽部に恋の予感か

 しかし、佃社長も自社の存続が掛かっているので、「そりゃ、そうですね」と引き下がるわけにもいきません。学会で上京してきた野木教授を「いいものを見せてやる」と誘い、「帝国重工」へと強制的に連行するのでした。佃社長の「いいもの」とは、「帝国重工」と「佃製作所」が共同で開発しているロケット用新型バルブの実験現場でした。会社の垣根を越えて、開発チームのメンバーたちが共に汗を流しています。BGMは英国合唱団「LIBERA」が歌う中島みゆきの名曲「ヘッドライト・テールライト」。佃社長の「彼らにはノルマを乗り越える歓びがあるんだ」という言葉に、ついついうなずいてしまう野木教授でした。一流詐欺師のような佃社長の見事な手口に、若干の恐ろしさを覚えます。

 

■悪の貴公子、さっそうと登場!

 池畑慎之介演じる悪徳弁護士・中川は刑務所送りとなりましたが、新章スタートに合わせて新しい悪役たちがぞろぞろと姿を見せました。「ダイダロス」の重田社長(古舘伊知郎)のもとに、野木教授から情報を盗んだ「キーシン」の戸川社長(甲本雅裕)、広報担当の北堀(モロ師岡)が顔をそろえます。これにダースベイダー化した「ギアゴースト」の伊丹社長が加わり、悪のマシン軍団の完成です。カメラは丁寧に、一人ひとりの悪党づらをクローズアップで映して見せます。オジさん俳優たちは、みんな悪いことがしたくて堪らないといった風情です。『下町ロケット』はサラリーマン版『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)なのかもしれません。

 美味しい悪役をオジさん俳優たちだけに独占させるのは、もったいないというものです。「佃製作所」を退職して、新潟県燕市にある実家の農業を継いだ殿村(立川談春)ですが、故障しがちな古いトラクターに頭を抱えている殿村の前に、さっそうと悪役界の貴公子が現われるのでした。ミュージカル『テニスの王子様』や『エリザベート』『モーツァルト!』など、ミュージカル界で活躍する古川雄大の出番です。

 農林協に勤める大農家の三男坊である吉井(古川雄大)は、殿村家の自家米が農林協を通さずに消費者に直売されていることが気に入りません。トラクターの故障箇所を見ていた佃社長を「こんな、修理のおっさん」呼ばわりした挙げ句、「米の品質なんて、客に分かるわけないだろ。米なんて、喰えりゃいいの」と農林協の職員とは思えない大暴言を吐くのでした。そのくせ、殿村から「あんたみたいな人がいると、米がまずくなる」と怒鳴られると、すたこらと退散していきます。とてもライトな小悪党ぶりは、古舘伊知郎率いる悪のマシン軍団とは違った軽やかなフレーバーで視聴者を楽しませてくれます。
 
 タレントの好感度ランキングがもてはやされた時期は、テレビドラマでも映画でも悪役をやると好感度が下がり、CMの仕事が来なくなってしまうという底の浅い理由から、俳優たちが悪役をやりたがらないというつまらない風潮がありましたが、北野武監督の『アウトレイジ』(10年)がヒットしたあたりから、風向きが変わってきたようです。俳優はダークサイド側の人間も演じられてこそ一人前です。うさん臭い芸能プロダクションの社長役のモロ師岡は、北野監督の名作『キッズ・リターン』(96年)では才能ある新人ボクサー(安藤政信)に酒と下剤を教えて潰してしまうロートルボクサーを好演しました。こういうアクのある俳優がいることで、いい出汁加減のドラマができるのです。甘い夢を語る、いい人たちだらけでは社会もドラマも回りません。

 新章スタートとなった第6話の視聴率は13.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)でした。福澤克雄チーフディレクターの演出により、前回の12.7%からちょい数字が回復しました。佃社長が言った「ノルマを乗り越える歓びがある」という台詞は、野木教授だけでなく、TBSのドラマ班にも向けた言葉でもあるようです。平均視聴率18.5%を記録した前シリーズに、どこまで後半戦は迫ることができるのか。軽部の恋の行方と共に注目したいと思います。
(文=長野辰次)

最終更新:2018/11/26 14:06
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