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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > F・マーキュリーが主人公のLGBT映画
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.505

“性のボヘミアン”フレディ・マーキュリーの生涯!! 名曲満載のLGBT映画『ボヘミアン・ラプソディ』

「ライヴ・エイド」の伝説のステージをリアルに再現。顔見せ的な演奏で終わるミュージシャンが多い中、4人は本気のライブに徹した。

 物語のクライマックスとなるのは、1985年に開催されたアフリカ救済のためのチャリティーイベント「ライヴ・エイド」のステージ。当初、「クイーン」の4人はこのチャリティーイベントに乗る気は薄かった。ボブ・ゲルドフが主宰する「ライヴ・エイド」だが、前年にリリースされたチャリティーソング「ドウ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」のレコーディングには「クイーン」は呼ばれなかった。時代遅れのバンドだとボブ・ゲルドフも世間も感じていたのだ。「クイーン」解散説がささやかれる中、奇跡の20分間が幕を開ける。

 フレディが歌う「ボヘミアン・ラプソディ」がウエンブリー・スタジアムに集まった7万人の観客を瞬く間に引きつけ、ロジャーが作曲した「レディオ・ガガ」が世界中のリスナーへと伝わり、そしてブライアンが作曲した「ウィ・ウィル・ロック・ユー」で4人はスタジアムと一体化する。「クイーン」はフレディだけのワンマンバンドではないことを証明した濃厚な20分間だった。4人は「伝説のチャンピオン」となった。孤独さに悩み続けたフレディは、ようやく「クイーン」という名のファミリーのもとに帰還することができたのだ。

 本作を撮ったブライアン・シンガー監督は、ケヴィン・スペイシー出演作『ユージュアル・サスペクツ』(95)でブレイクし、SF大作『X-MEN』シリーズを大ヒットさせてきた。ゲイであることをカミングアウトしており、『X-MEN』シリーズは世間から迫害された異能者たちが自分たちの居場所を求め続ける切実なドラマとして評価されている。性的アイデンティティーに悩み、表現の世界で才能を開花させていくフレディの姿は、ブライアン・シンガー監督の歩みと重なり合うものとなっている。フレディは音楽とショーマンシップに特化したX-MENの一人だとも言える。

 ブライアン・シンガー監督にとって入魂作のはずの『ボヘミアン・ラプソディ』だが、過去の性的虐待疑惑が「#Me Too」運動と共に再び問題視され、撮影終盤になって途中降板するという形で映画界から姿を消してしまった。フレディは仲間に詫びを入れ、無償イベント「ライヴ・エイド」で全力のステージを披露することでファンに受け入れられた。ブライアン・シンガーにとって、帰る場所はどこになるのだろうか。
(文=長野辰次)

『ボヘミアン・ラプソディ』
監督/ブライアン・シンガー 脚本/アンソニー・マクカーテン
音楽総指揮/ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー
出演/ラミー・マレック、ルーシー・ボイントン、グウィリム・リー、ベン・ハーディ、ジョゼフ・マゼロ、エイダン・ギレン、アレン・リーチ、トム・ホランダー、マイク・マイヤーズ、アーロン・マカスカー
配給/20世紀フォックス映画 11月9日(金)より全国ロードショー
C)2018 Twentieth Century Fox
http://www.foxmovies-jp.com/bohemianrhapsody/

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最終更新:2018/11/09 22:30
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