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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.505

“性のボヘミアン”フレディ・マーキュリーの生涯!! 名曲満載のLGBT映画『ボヘミアン・ラプソディ』

英国のロックバンド「クイーン」のボーカル、フレディ・マーキュリーの波乱に満ちた生涯を描いた『ボヘミアン・ラプソディ』。

 映画はスクリーンに投影された監督自身の巨大な自画像だ。人気ロックバンド「クイーン」のボーカルだったフレディ・マーキュリーの生涯を描いた『ボヘミアン・ラプソディ』は、セクシャリティーの問題を抱えたフレディの実話であり、同時にブライアン・シンガー監督の心の叫びも刻まれている。全編にわたって「クイーン」のヒット曲が散りばめられた本作は、エンターテイメントLBGT映画と称したい。

 23歳のフレディ(ラミ・マレック)が、ギタリストのブライアン・メイ(グウィリム・リー)、ドラマーのロジャー・テイラー(ベン・ハーディ)と出会うところから物語はスタート。ロンドンのヒースロー空港で荷物係として働くフレディは職場で「パキ」と呼ばれるたびに「僕はパキスタン人じゃない」と反論する。だが、その後の言葉が続かない。両親はインドからの移民でゾロアスター教徒だったが、当時のフレディはまだ何者でもなかった。

 ナイーヴさと野心を併せ持つフレディは、ライブハウスで見つけたお気に入りのバンド「スマイル」にアプローチする。「スマイル」のブライアンとロジャーは、ちょうど新しいボーカルを探しているところだった。ブライアンは天文物理学を研究する大学院生、ロジャーは歯科医を目指す大学生だったが、この3人が出会ったことで彼らの運命は大きく変わる。1年遅れでベーシストのジョン・ディーコン(ジョゼフ・マゼロ)が加入。英国ロック界のキングならぬ「クイーン」の誕生だった。

 上あごの歯が他の人よりも4本多かったフレディ。その異彩を放つ風貌のボーカリストは、ステージに上がると溜め込んでいたコンプレックスを爆発させた。アフリカのザンジバル島で生まれ、インドで少年時代を過ごしたフレディのユニークな経歴は、ロックというジャンルに収まらない多彩な楽曲を生み出すことになる。1974年にはシングル曲「キラー・クイーン」がスマッシュヒット。何者でもなかった「クイーン」の4人は、ロック界の人気者となっていく。

 名曲誕生の秘話が楽しい。英国の農村に4人で合宿し、彼らの代表曲「ボヘミアン・ラプソディ」が産み落された。演奏時間6分という大作だったため、レコード会社のレイ社長(マイク・マヤーズ)は「こんな長い曲はオンエアされない」と反対するが、「いい曲かどうかを決めるのはリスナーだ」と4人は一致団結して突っぱねる。フレディがレコーディングに遅刻した際には、ブライアンが「観客参加型の曲を」と「ウィ・ウィル・ロック・ユー」の足踏みのアイデアを思いつく。「クイーン」はロックの縛りから解き放たれることで、逆にロックの王道を進むことになる。

フレディ(ラミー・マレック)にとって、メアリー(ルーシー・ボイントン)は生涯にわたる良き理解者だった。

 名声が高まるにつれ、フレディの性的嗜好性が注目を集めるようになっていく。英国の記者たちは「クイーン」の音楽性よりも、フレディが同性愛者なのかどうかについての質問を繰り返した。セクシャリティーについての問題は、フレディを悩ませ続けた。長年の恋人メアリー(ルーシー・ボイントン)と一緒に暮らしていたが、レコーディングや海外ツアーで忙しく、2人はすれ違いが多くなっていた。

 フレディの悩みに以前から気づいていたメアリーは、フレディの「僕はバイセクシャルなんだ」という告白を静かに受け止める。メアリーはとても優しい。「あなたはゲイだと思うわ。でも、それはあなたが悪いわけじゃない」とメアリーは伝え、2人の共同生活は解消されることになる。メアリーとフレディはその後もずっと仲のいいソウルメイトであり続けた。

 他のメンバーがそれぞれ家庭を築く一方、フレディは孤独さを抱え込んでいた。大豪邸で夜な夜なパーティーを開き、若い男女が集まるようになる。アルコールにドラッグにスワッピング……。ソドムの市を思わせる享楽の日々だった。フレディのぞんざいな態度が目立つようになり、メンバー間にも亀裂が生じ始める。そんなある日、フレディは衝撃的な宣告を受ける。エイズに感染していると医者から告げられたのだ。

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