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変人・軽部のいない職場は紅ショウガのない牛丼!! TBS側の痛恨の演出ミス『下町ロケット』第4話

TBS系『下町ロケット』番組公式サイトより

 阿部寛主演の熱血理系ドラマ『下町ロケット』(TBS系)は、前半戦となるゴースト編が早くもクライマックスです。1クールのドラマに直木賞作家・池井戸潤の新刊小説『下町ロケット ゴースト』『下町ロケット ヤタガラス』(ともに小学館)の2巻を惜しげもなく投入しているので、物語の展開がやたらと速いのがこのシリーズの特徴です。阿部寛演じる佃社長は、ベンチャー企業「ギアゴースト」とのM&Aを無事に果たすことができるのでしょうか? 『下町ロケット ゴースト』第4話を振り返ってみましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

 今回はサスペンスタッチの細かいカット割りで物語が進んでいきます。極秘情報だったはずの佃社長(阿部寛)率いる「佃製作所」と伊丹社長(尾上菊之助)が立ち上げた「ギアゴースト」とのM&Aですが、どうも内通者がいるようです。弁護士の神谷(恵俊彰)は「ギアゴースト」側を疑っています。「ギアゴースト」の誇る天才エンジニア・島津(イモトアヤコ)の開発情報が、ライバル社「ケーマシナリー」にダダ漏れしているのではないかと。「社員は家族。家族を疑うことなんてできない」と伊丹社長は怒って退席してしまいます。

「ギアゴースト」が特許侵害で15億円の損害賠償を求められている問題を、陰で操っているのは悪徳弁護士の中川(池畑慎之介)です。中川弁護士が「ケーマシナリー」の知財部長・神田川(内場勝則)といつもの薄暗い中華料理店で悪企みをしていると、そこに現われたのは「ギアゴースト」の顧問弁護士・末長(中村梅雀)でした。内通者は社員ではなく、弁護士だったのです。弁護士がクライアントの情報を外部に流すことは到底許されません。でも、末長は3億円という大金に目がくらんで魂を売ってしまいました。タヌキ顔の中村梅雀にタヌキ親父役を演じさせるという、非常に分かりやすい配役ですね。さらに佃社長を敵視する新興企業「ダイダロス」の重田(古館伊知郎)がここに加わり、最凶ヒール軍団が結成されたのです。

 一方、15億円の賠償金を請求されている「ギアゴースト」を救いたい佃社長は、裁判に少しでも有利になるような証拠探しを始めます。島津が新型トランスミッション開発の際に参考にした論文を見つけ出し、「ケーマシナリー」の特許を盗んだのではないことを証明しようと考えたのです。これも神谷弁護士の入れ智恵です。第2話では神谷のアドバイスに従って、「佃製作所」はクロスライセンス契約が可能な製品はないかと延々と「ギアゴースト」と「ケーマシナリー」のパーツを分解し続けるという無駄骨を折りましたが、今回もその二の舞いになりそうです。島津に相談することもなく、佃社長は全社員に命じて膨大な量の論文を片っ端から調べ始めます。中川弁護士に負けず劣らず、神谷弁護士もひどい男です。

「1%でも可能性があれば、それに賭けるんだ」と佃社長は熱く語りますが、これはどう考えても無謀すぎるというもの。会議室に広げられた論文の山を、「佃製作所」の社員は総出で読み始めます。立花(竹内涼真)もアキ(朝倉あき)も社員はみんな、熱血理系バカの佃社長のことが大好きなので、ひと言も文句を言わずに黙々と論文を読んでいます。念のために説明しておきますが、「ギアゴースト」はまだ買収する前の別会社にしかすぎません。その別会社が裁判でもしかしたら有利になるかもしれないという資料を、全社員で闇雲に探し続けているのです。当然ですが、論文チェックはサービス残業でしょう。「佃製作所」は毎日がサービス残業DAYです。

 このシーンを見ていて、何か足りないことに気づきました。「佃製作所」きっての変人キャラ・軽部(徳重聡)がいないのです。今週の軽部は序盤にチラッと登場しただけで、論文チェックの場面には姿を見せませんでした。軽部なら、こんな非効率な作業に対し「はぁ、残業? 俺はイヤ~ッ」とさっさと定時で帰ったことでしょう。佃社長に面と向かって文句を言える平社員・軽部は、とても貴重な存在です。イケメンキャラを捨てた徳重の変人ぶりを毎週チェックするのが楽しみだっただけに、重要な局面での彼の不在は残念でした。もはや軽部のいない「佃製作所」は、紅ショウガの入っていない吉野家の牛丼と言っても過言ではありません。TBS側の痛恨の演出ミスです。

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