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【五所純子/ドラッグ・フェミニズム】麻薬のドレスを脱ぎ捨てるダンサー・君島かれんの野良知性

――覚醒剤、コカイン、大麻、向精神薬……クスリに溺れる女たちを嗤うのはたやすい。だが、彼女らの声に耳を澄ませば、セックスやジェンダーをめぐる社会の歪みが見えてくる。これは、文筆家・五所純子による“女とドラッグ”のルポであり、まったく新しい女性論である。

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2018年2月、コカイン使用の疑いで逮捕されたゴーゴーダンサーの君島かれん。(写真/草野庸子)

「あんま覚えてないんですよね」

 まただ。かれんも言う、リナも真弓も言った。初めてクスリをやったのはいつ? 捕まったときの状況は? どう殴られた? あいつと出会ったきっかけは? 過去の重要な局面を問うと、彼女たちは“覚えていない”と答える。はぐらかしているのではない。実に記憶が曖昧なのだ。自分の身に起きていることに注意深くブックマークをつけながら今を体験している人なんていない。それは押し入り強盗でなく、忍びやかに日常に溶け込み、気づけば私がそれだった。他人に見える転機と、本人が感じる転機とは、たぶん違う。

 現在21歳の君島かれんは、2018年2月に逮捕された。コカインを使用したとする麻薬取締法違反容疑。

「びっくりしたのは、弁護士に見せられたヤフーニュース。“一緒にいた知人”とか“職務質問”とか間違ってて、何言ってんのって。20日間勾留されたけど、誰にも助けを求めてないし、悲しくて泣いたこともない。でも、先輩とか仕事仲間とか毎日来てくれて、それも責める感じじゃなくて、『気持ちわかるから』って気遣ってくれて、うれしかった。親? 家族に頼るのは違くないですか。私、10代で何度も家裁(家庭裁判所)行って、『今のうちはいいけど、20歳超えて捕まったら家出てけよ』って、父親と約束したから」

最終更新:2018/11/03 20:00
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