徴用工判決のみならずエンタメ界でも嫌韓ムード BTS(防弾少年団)、IZ*ONE、iKON…続く炎上
戦前に日本が朝鮮の人々を強制労働させていた「徴用工」の問題。元徴用工が求めた損害賠償の裁判に対し、韓国の最高裁が新日鉄住金への支払命令を出したが、これに関して日本国内では猛反発が起きている。
日本は徴用工の問題について「1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決している」という立場をとっており、韓国側の司法の判断に日本政府は異議を申し立てている。安倍首相は「今般の判決は国際法に照らしてあり得ない判断だ。日本政府として毅然と対応していく」と答え、また、河野太郎外務大臣もイ・スフン駐日大使を外務省に呼び「韓国政府は直ちに必要な措置をとってもらいたい」と抗議、国際司法裁判所への提訴も視野に入れているとの認識を示した。
この問題については日本国内でも議論が分かれており、日韓請求権協定でも「個人に対する請求権は消滅していない」との見方もある。
また、過去には元朝鮮女子勤労挺身隊員の女性に訴えられた不二越が解決金を払って和解している先例もあり、今回の新日鉄住金も2013年にソウル高裁が賠償を命じた後で和解の選択肢が議論されていたのだが、それを知った日本政府が止めたためにこのような結末を迎えたとの報道もある(2018年10月31日付京都新聞)。韓国側との玉虫色の解決を拒んだ結果、安倍政権がさらなる分断を招いたとの議論もあるようだ。
とはいえ、日本のインターネット上では「国交断絶」を勇ましく叫ぶ声が溢れている。
たとえば、保守系ユーチューバーのKAZUYAは投稿した動画のなかで<韓国って狂ってますよね><韓国は文明国としてもあり得ませんね><韓国は何なんでしょうね、本当に残念な国です><韓国から文明退化の音、聞こえてきますね><日本の企業、韓国から撤退したほうが身のためじゃないでしょうか。契約したって破るかもしれませんし、後になって難癖つけてくるかもしれない。それは今回の判決でも明らかですし>と、韓国への罵倒を繰り返している。ネットユーザーのなかにはそういった意見に賛成する人も多い。
BTS(防弾少年団)、IZ*ONE、iKONで起きた炎上
ここ最近、こういった日韓両国の分断を伝える報道が後を絶たない。特に、K-POPをはじめとしたエンターテインメント業界での騒動は目立つだけに、しばしば取り上げられる。
そのなかでも特に大きかったのがBTS(防弾少年団)の件だろう。今年9月、BTSが日本でリリースするトリプルA面シングル「Bird/FAKE LOVE/Airplane pt.2」(11月7日発売予定)をめぐって炎上が起きた。
3曲のうち、「Bird」は日本オリジナル楽曲で、作詞を秋元康氏が手がけることになったが、このコラボレーションを受けて、楽曲が解禁になる前から異論が続出した。反対が起きた理由は、秋元氏が過去に手がけた曲のなかに女性蔑視な楽曲が多く含まれており、そういった作家との仕事は、BTSがこれまで活動を通して掲げてきた主張とは相容れないというのがひとつ。またもうひとつは、秋元氏が韓国に対して敵対的な姿勢を貫く安倍首相と近しい関係にあるとの指摘だ。
その後、BTSのファンによる署名運動なども起き、結果的にこのコラボレーションは中止となった。シングルは「FAKE LOVE」と「Airplane pt.2」の両A面シングルとして発売される予定である。
ちなみに、BTSに関してはメンバーのジミンが、原爆のきのこ雲と両手を上げてバンザイする人々が写った「原爆Tシャツ」を着ていたことを指摘されて様々な議論も起きている。
また、秋元氏といえば、宮脇咲良、矢吹奈子(ともにHKT48)と本田仁美(AKB48)が参加している日韓合同のアイドルグループ・IZ*ONEでも問題が起きている。10月29日にリリースされたIZ*ONEの1stミニアルバム『COLOR*IZ』に収録されている楽曲「好きになっちゃうだろう?」(IZONE ver.)が韓国の公共放送局KBSで放送不可判定を受けたのだ。「好きになっちゃうだろう?」(IZONE ver.)は『COLOR*IZ』収録曲のうち唯一日本語で歌われている曲だが(作詞は秋元氏)、KBS関係者は当該楽曲の歌詞全体が日本語で構成されていることが放送審議関連規定に触れると説明しているのだという(2018年10月31日付ニュースサイト「Kstyle」より)。
こんなこともあった。iKONのJU-NEはインスタグラムで北野武に関する投稿をしたが(2018年9月24日)、北野武は過去に発した嫌韓発言により韓国内で論争が起きている人物であり、当該インスタグラムの投稿に対して「削除してほしい」という旨のコメントが相次いだ。JU-NEは当初そういったファンからの申し出を拒絶していたが、結局は削除のうえで謝罪文を掲載することになった。
「国交断絶」を煽ることに何の意味があるのか?
こうして日韓両国の分断が深くなってしまうのを見るのは悲しいことだが、では、どうしてこのような事態になってしまったのか、考えてみる必要があるだろう。
KAZUYAは今回の件に、こうコメントとしている。
<嫌韓とか反韓っていうのは韓国が原因つくっているわけですよ、こうやって>
しかし、現在起きている分断は本当に韓国側だけの責任なのか?
言うまでもなく、戦前の日本が行ってきた植民地政策や、そのなかで東アジア諸国に対して強いてきた非道な行為の数々をなかったことにしてこの問題を論じることはできない。
この数年、歴史修正主義のもと植民地支配を肯定しようとする安倍政権や、その支持層の態度が、現在の分断を助長していることは自明だ。
いわゆるネトウヨ層は「国交断絶すべし」と声高に謳うが、そもそも、そのように感情的になって両国の分断を煽りたてることに何の益があるのだろうか?
それよりも、歴史に対して真正面から向き合ったうえで、両国の未来のために前向きな関係をどうすれば構築できるかを、国民ひとりひとりが考えることのほうがよほど建設的だろう。
話は変わるが、こんなほっこりとする良い話がある。
元東方神起のメンバーで現在はJYJやソロで活動しているジェジュンは「サンデー毎日」(毎日新聞出版)2018年9月30日号掲載のインタビューのなかで、西日本豪雨の際にボランティアに参加したエピソードを語っていた。
<家でニュースを見ていたら、特に広島でボランティアが不足していることを知って。7月はすごく忙しかったんですけど、4日ほど休みがあったので、行こうと決めました。
それで日本の友人たちと食事をした時、「一緒に行こう」と誘ったんです。ところが、みんなあまり行きたがらない。結局「震災の時は他の国に助けてもらったじゃない。自分の国で大変なことになっている人たちがいるんだから、行こうよ」と説得して、4人で行きました。事務所に相談すると仕事になっちゃうから、直前まで言わずにいたんです>
両国の国民がこうしてお互いのことを思い合うこと。そのことの方が、分断を煽ることよりもよほど大切なことなのではないだろうか。
(倉野尾 実)
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