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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『大恋愛』楽しげな宣伝も内容は残酷

戸田恵梨香『大恋愛』2ケタキープ中! 楽しげな宣伝とシビアな内容のギャップがスゴイ

■尚ちゃん、病気を告げる

 そんなわけで、尚ちゃんは真司くんにも別れを告げることにしました。何しろ今後、自分が誰だかわからなくなるし、服も自分で着れなくなるわけですから、このままお付き合いを続けるのもいかがなものかということです。

 真司くんはママから受け取ってしまった100万円の札束を眺めながら、尚ちゃんと真剣に付き合おうと思っていたところでしたので、ひどく落ち込んでしまいます。しかも、尚ちゃんからは「やっぱり予定通り結婚するわ」と言って振られたのに、実際には結婚もしないみたいだし、何が何だかわからなくなってしまいます。

 と、尚ちゃんから電話が鳴ります。

「助けて、真司! 助けて!」

 あの観覧車が見える橋の上で、尚ちゃんはパニックになっていました。視界が歪み、ここがどこだかわからない。あたりをさまよっているところを見つけ出してくれて、部屋に連れて帰ってくれた真司くんに、尚ちゃんは告白します。

「電話かけてごめんね。別れたの、忘れちゃってた」

「あたし、若年性アルツハイマー病の前段階の、軽度認知障害なの」

 真司くんは、尚ちゃんが例えガンでも、エイズでもアルツハイマーでも心臓病でも腎臓病でも糖尿病でも歯周病でも中耳炎でも物もらいでも水虫でも「一緒にいたい」と言ってくれました。で、次回へ。

 

■いちいち曖昧で的確な行間とニュアンス

 ドラマというのは行動やセリフの行間のニュアンスが伝わってくると深みが増すものですが、『大恋愛』は実に丁寧にそういうものを伝えようとしてきます。

 真司くんは前回、押入れの奥から古いパソコンを引っ張り出して、久しぶりに小説を書くことにしました。それはもちろん尚ちゃんに読ませるためだし、尚ちゃんも真司くんの新作を熱望していた。

 ところが今回、部屋に来た尚ちゃんは真司くんのテーブルにパソコンが開いていることを見つけても、あんまり何も言いません。ちょっと目線を送るだけ。

 憧れの作家が待望の新作に手を付けようとしているわけですから「また書くんだ!」「書いてくれるんだ!」と大喜びしてもいいところだけど、ちょっと目線を送るだけの戸田恵梨香をさりげなく撮る。

 よくわかんないけど、尚ちゃんのそういうところ、いいなと思うんです。そういう人なんだな、とか。

 あるいは、100万円を受け取った真司くんが、その札束を眺めていたら窓を拭きたくなった。窓を拭いていたら、尚ちゃんとずっと一緒にいたいと思うようになったと言う。

 普通、そういう思考回路で結論に至ったとしても、意味がわからないからそのままは言いません。でも、真司くんは言う。なぜなら、小説家だからなんだろうな、とか。

 説明しづらいけど、明確に「ニュアンスを伝える」という作業を怠ってない感じ。いいドラマだなと思います。

 

■食い物が出てくると不安になる

 あと、物語とは直接関係ありませんが、このドラマには、食べ物を食べて「おいしー」というシーンがたくさん出てきます。2人のアンセム的な存在となった居酒屋「晩杯屋」、真司くんが食べたことのなかったアップルパイ、病気のことを知ったママが最初に尚ちゃんを連れ出してくれた高級ステーキ店、パニックに陥った尚ちゃんに真司くんが供したレトルトスープ。その「おいしー」というシーンが、ドラマの中で非常に重要な“救済”の役割を果たしている。

 アルツハイマーは記憶がなくなるだけでなく、味覚も変になってしまうといいます。病気が進行した尚ちゃんが「おいしー」を感じられなくなるときが来ると思うと、あるいは、美味くもなんともないものを尚ちゃんが口にして無邪気に「おいしー」とか言ってたりするのを想像すると、もう泣けてきちゃうよね。文字通り、救いがなくなる。

 ともあれ、ハッピーラブコメを装った宣伝をしつつ、マジメに作っている感じがしてたいへん好印象な『大恋愛』。次回も楽しみです。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

最終更新:2018/10/26 17:00
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