「美女」と「PC」と「液体窒素」……のだめ作者が描く『87CLOCKERS』の超絶マニアックな世界
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■液体窒素が普通に出てくる日常が異常すぎる
オーバークロックはCPUの発熱との戦いになるため、いかに効率よく冷やし続けるか、というのがオーバークロッカーたちのテクニックの見せどころになります。その手法として、空冷、水冷などがあり、その中で一番ベーシックな手法が「空冷」なのです。皆さんが使っているパソコンにも、ファンという小さな扇風機みたいなのがついていますよね? 要するに、あれが「空冷」です。
そして、実用性度外視の競技向けの冷却方法が「極冷」と言われる液体窒素を使ったもの。むき出しになったパソコン基板の上にカップを置いて、そこに液体窒素を注ぎ、CPUをダイレクトにマイナス190度以下の世界まで冷却します。気化した窒素が、まるでバルサンのようにもうもうと立ち込め、部屋を閉め切っていると酸欠になってしまうこともあるのです。まさに命懸けというわけです。
ミケ、ハナ、奏など、本作に出てくるオーバークロッカーたちは、パソコンのパーツ代や大量に使用する液体窒素代を捻出するため、内職したり、工場でバイトをしたり、食費を極限まで削ったり、精子凍結保存用の液体窒素を分けてもらえるという理由で、牧場に住み込んで働いたり、まさに液体窒素中心の生活を送っているのです。常人にはまったく理解できない世界ですよね。
■キャバ嬢なのに、職人気質
秋葉原で自作のPCパーツを買う際に知り合ったジュリアという女性――実はミケに憧れてオーバークロックの世界に入り、資金を作るためにキャバ嬢をやっている女子大生です。
ジュリアは奏の才能に目をつけ、一人前のオーバークロッカーに育てるため、自分のパートナーとして徹底的に鍛え上げるのですが、そのジュリアのこだわりは「空冷」を極めることでした。
オーバークロッカーたちが集う「オーバークロックカフェ」で水冷派のオーバークロッカーに挑発され、バトルをすることになったジュリア。スペック的には圧倒的に水冷のほうが有利なのですが、ジュリアのパソコン「レディー・バタ子」には、驚くべき仕掛けが隠されていたのでした。CPUの負荷が高まるとパソコンのフタが羽のように開き、巨大な業務用ファンが2基も稼働してPCを冷やすのです。普通だったら風力が強すぎてPC自体が吹っ飛ぶところが、ジュリアのパソコンはスワロフスキーでデコっているため、重さで飛ばないようになっていたのです。そして、圧倒的不利をはね返してジュリアが勝利。そう、ジュリアは一番効率の悪い空冷で、水冷などを使う他のオーバークロッカーたちをブチのめすことに生きがいを感じているのです。キャバ嬢にして、なんという職人気質でしょうか。
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