“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、アニメ『若おかみは小学生!』を見て本気で怒る「おっこが可哀想だろう!」
#インタビュー #瓜田純士
“キング・オブ・アウトロー”こと瓜田純士(38)が森羅万象を批評する不定期連載。今回のテーマは、SNSを始めとする口コミで話題沸騰中のアニメ映画『若おかみは小学生!』(原作:令丈ヒロ子、監督:高坂希太郎)だ。文部科学省がお墨付きを与えたこの作品を見て、アウトローは何を感じ、何を語るのか?
『若おかみは小学生!』は累計発行部数300万部を誇る人気児童文学シリーズで、今年4月からテレビアニメがスタート。そして、9月に映画化されるや、SNSなどで「感動した」「泣ける」などの評判が一気に拡散。10月19日現在、Yahoo!映画のレビューでも「5点満点で4.4点」という驚異的な高評価を叩き出している。
そのストーリーは、ざっくりいうと以下の通り。
交通事故で両親を亡くし、祖母の峰子が経営する温泉旅館・春の屋に住むことになった小学6年生の「おっこ」は、幽霊のウリ坊のお願いで、若おかみとして修行を始めることになった。初めはいやいやながらの修行だったが、次第に若おかみとしての自覚を持つようになり、春の屋を大きくしたいという夢を抱くようになる――。
文部科学省が「少年・家庭向き」として推奨する本作。取材当日の劇場は老若男女で満員だった。原作未読でテレビも未見、映画のこともまるで予習せぬまま愛妻と共に入場した瓜田は、「すごい人気だな。楽しみだな」とつぶやきながら着席した。
だが、映画が終わるやいなや、エンドロールも見ずに退席してしまった。そんな瓜田を追いかけて、インタビューを開始。
* * *
――いかがでしたか?
瓜田純士(以下、純士) ひどいっすね。なんでこんなに混んでるんだ?
瓜田麗子(以下、麗子) なんでやろな? キツかったわぁ、ホンマ。日曜の朝にやってる子ども向けのテレビ番組『魔法×戦士 マジマジョピュアーズ!』を延々と見せられた感じやわ。
純士 テレビなら即チャンネルを変えるところだけど、映画だからそうもいかず、弱り果てた。最後の最後にちょっとだけいいところがあったけど、全体的にグダグダでしたね。
――上映中、ご夫婦の笑い声が聞こえてきたから、楽しんでいるのかと思ったのですが……。
麗子 ひどすぎて笑けてきただけや。
純士 序盤から乗れず、隣にいる嫁としょっちゅう顔を見合わせて、「ないわ、これ」と笑ってたんです。アニメって、1枚1枚の絵を作るのがものすごく大変って言うじゃないですか。そこに大勢のスタッフが携わってるのかと思うと、こき下ろすのは気が引ける。じゃあどこを褒めたらいいんだろう、って考えてるんだけど、一向に言葉が見つからない。
――では、ダメだった点を挙げてもらえますか?
純士 俺ら夫婦はまず、あの絵がダメなんですよ。神社とか旅館とかに代々伝わる霊的なものを題材に取り入れつつ、命の大切さや、別れは寂しいことじゃないんだよってことを描きたかった作品だと思うんだけど、そこにオタク要素の強いキャラが大集合して、絵がワチャワチャしすぎたせいで、なんだかよくわからなかった。着想はいいのに、それを生かせてなかったような気がします。こういうのは絶対、実写のほうがいいですよ。
麗子 ええっ? 実写は無理やろ。もひとつキツイわ。
純士 いや、できると思う。アニメでこういう神社とか旅館とか霊とかをテーマにするなら、宮崎駿みたいな絵じゃないとキツイ。それか『河童のクゥと夏休み』みたいな絵。やっぱ人を感動させたければ、それにふさわしい絵のタッチってもんがあるんですよ。特別きれいなわけでもない、古風な絵。そういうのだったら感動したかもしれない。この作品は、萌え系の絵ですべてを台無しにしちゃった感がある。
――おふたりの趣味に合わなかっただけでは?
純士 いや、それだけじゃないですね。自分が今YouTubeで動画配信を始めたから感じるんですけど、アニメであれ実写であれ、人って、ただ道を歩いてるだけの映像じゃ楽しめないんですよ。転んだり立ち上がったり、知り合いに会ったり音が入ったり。そういう変化やアクシデントがあるから楽しめるんだけど、この作品に関しては、常に一定のリズムで進んでる感じがあって、どこがサビなのかもわかりづらかった。ハッとしたのは、最初の事故だけ。事故のときは、「あ、なるほど。ただのワチャワチャしたアニメじゃないんだな。結構ヘビーな話を放り込んできて、ここからいい話になるんだろうな」と思ったんですよ。ところが、全然そうじゃなかった。つまらないだけならまだしも、看過できない部分もあったし。
――看過できない部分とは?
純士 おっこの勤務体系は、ほとんど労働基準法違反だろ! と思いました(笑)。家業を手伝う場合は労基法に触れないみたいだけど、あのハードワークは手伝いの域を超えてるでしょ。小学生の女の子が、両親が死んだショックを抱えたまま旅館に行ったら、紫メッシュのババアにまるめこまれて、奴隷のように働かされるなんて……。さらには親の仇まで現れるのに、「春の屋のお湯は誰も拒みません」なんて涙目で踏ん張らされて、可哀想と言うほかないです。
麗子 しかもあのおばあちゃん、おっこの頑張りを褒めたったらええのに、ずっとイビっとったやろ。あれが可哀想で、可哀想で。そりゃ精神的に追い込まれて、お化けも見るわと思ったわ。
純士 若おかみとして旅館の看板を背負って成長していく感動の物語……って言うけど、そもそもあの子が望んだ職業じゃないでしょ。最初はいやがってたわけだし、あの子には選択権もなかったわけだから。あれじゃあ密入国で働かされる中国人と一緒。あの紫メッシュのババアは、蛇頭の元締めみたいなもんですよ(笑)。親が死んだばかりで弱ってる少女を、お化けを使って洗脳して、勝手に人格まで形成しちゃう。あの調子だと、おっこは旅館が潰れるまでおかみじゃないですか。可哀想に。児童虐待スレスレだし、職業選択の自由もない。アニメの設定に目くじらを立てるのも野暮だけど、そんな作品に「文部省選定」とあるから、おいおいマジかよと呆れました。おまけにやたらと界隈で人が死ぬし。
麗子 命を軽視しすぎやねん。ああいうのは、子供が真に受けて見てしまう恐れがある。「死んでもまた会える」と思ったら命を軽視するから、あれはアカン。
純士 いや、作者は決して命を軽視してないと思うよ。「死を暗いものにしないように」と考えて、子ども向けに「愛と希望」に持っていこうとしただけでしょう。ただ、おひよ(妻の愛称)みたいに揚げ足を取る人間が出てくるのも仕方がない作りではありました。
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