人生の折り返し点に立った男女が織りなす物語が始まる――佐々木蔵之介主演『黄昏流星群』第1話
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しかし、スイスに着くも天候が悪く、お目当てのマッターホルンを見ることもできない。
「運命の冷酷さにふと逆らってみたくなった」
そんな思いから、彼は悪天候の中、ロープウェイに乗り込む。
発車のベルが鳴り終わる間際、一人の日本人女性が乗り込んでくる。それが運命の相手・目黒栞(黒木瞳)だった。
二人が乗ったゴンドラ、それこそが、人生の象徴のようだ。先が見えない、終点まで行っても美しい景色が見られとは限らない。それでもただ、そこに向かってみたい。それが年を重ねていく人の「運命に逆らう」という思いなのだろう。
結局、山の上は吹雪ですぐに引き返すことになる。しかし、そこで二人は意気投合し、ホテルで夕食を共にする。栞は完治に言う「荷物を下ろしにきたのか」。
仕事に追われ、気づけばいろんなものを背負っていた。出向の宣告をきっかけに、その荷物を下ろしたくなった。その気持を栞が感じ取ったのだろう。栞の言葉で心が軽くなった完治は、今の状況を正直に話す。家族にも言えないことを口にできたのだ。
その後、完治は栞を部屋に誘い、関係を迫るが、栞に拒まれてしまう。翌朝、栞は、完治に何も言わずホテルを出ていく。もう一度会いたいと願う完治であったが、それは叶わなかった。
家族に仕事だと嘘をついてスイスに行っていた完治は、銀行からの電話で妻と娘にそれがバレてしまう。浮気ではないかと疑う2人。家族の間にも隙間ができつつあった。
日本に戻った完治は、出向先である荻野倉庫を見に行く。そこの社員食堂で働いていたのは、スイスで会った栞であった。再会した二人は、改めてお互い名乗り合う。新しい物語が始まるのだ。
人生の折り返し点、そこから見える景色は、決して明るいものではない。老いていく体、薄れていく情熱、その果てには茫漠とした死が横たわっている。でも、だからこそその中に、輝く流星のような美しさを探してみたくなるのだ。
結局私は会社を辞め、フリーでライターなどの仕事をするようになった。一流銀行のエリートであった完治とは比ぶべくもないが、同じ時代を生き、同じように人生の後半を見つめている身としては、どこか共感する部分があったりするのである。
過ぎていく年齢に抗うつもりはない。ただ、人生の最後の時期、空に輝く流星のように、光ることはできないだろうか。そんな思いが心によぎる。
完治、真璃子、そして栞。主人公は出揃った。三人の迎えた人生の先に、新しい物語は、どのように広がっていくのだろうか。
(文=プレヤード)
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