村田らむ×丸山ゴンザレス──「死体見たい」でいい! 樹海、ニューヨーク取材で見えた人間の本性とは?
#本 #インタビュー
ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教などを中心に取材を続けてきた村田らむ氏と、国内外の裏社会や危険地帯の取材を続ける丸山ゴンザレス氏。コミック誌「本当にあった愉快な話」(竹書房)では、丸山氏の取材をもとに村田氏が漫画を描くコラボレーション連載『行ってはいけない!』も好評な2人は、共に、アンダーグラウンドな世界と向き合ってきたライターだ。
そんな彼らがこの夏、村田氏が『樹海考』(晶文社)を、丸山氏が『GONZALES IN NEW YORK』(イースト・プレス)を上梓した。それぞれ、何年にも渡って足を運び続けてきた「樹海」、「ニューヨーク(の裏側)」を独自の視点から切り取り、ガイドブックには載っていない魅力がまとめられている。いずれも、なかなか人がいかない場所に足を踏み入れ、“ダークツーリズム感覚”で取材現場を楽しんでいるのが印象的だ。
そこで今回は、長年ルポライターとしてさまざまな現場に足を踏み入れてきた2人に、我々でも実践できる、一歩“裏道”に踏み入れることで見え方が変わる、ダークツーリズム的観光地の楽しみ方を聞いてみた。
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──現在、動画配信サービス「Netflix」で注目を集めているドキュメンタリー番組、『世界の“現実”飛行(Dark tourism)』で日本の“ダークツーリズム”スポットとして紹介された、福島や軍艦島などもまた、お2人の取材先となっていた場所でした。そもそも、取材場所を選ぶ時に、何か意識していることはあるんでしょうか?
丸山ゴンザレス(以下、丸山) 世間ではダークツーリズムとカテゴライズされているものを、意識していることもあれば、ないこともありますね。らむさんはどうです? 『樹海考』の中で、「そこにあるものを探しに行っていた」と書かれていた一節が、気になってたんです。
村田らむ(以下、村田) かっこよく言えば、ですよね。本のまえがきにも書いたんですが、大学を卒業して最初はイラストレーターになった。それでそこそこ食えるようになったからライターもやってみたいなと思ったものの、金もコネもない。だから、“そこに行けばある”ってことが重要だったんですよ。そもそもライターになるまでは旅行なんてほとんどしなかったですね。イラストで大成功してたら、取材のために“現場に行く”ってことをしてなかったかもしれない。
丸山 樹海は記事化しやすい場所だった?
村田 現金化しやすい場所ですよね(笑)。樹海の記事は読みたい人が多い。旅先を選ぶ時も、“後から記事にしやすい場所”という条件をつけたほうがどこに行くかを決めやすいんですよね。金にはならんけど行きたい場所ってのは、あんまり思い当たらない。僕が樹海に初めて入ったのはもう20年くらい前になるんですけど、その頃はまだ、取材に通っている人も少なかった。実際行ってみたら風景も気に入ったし、記事にできるだろうと思いましたね。
丸山 (金銭的に)プラスにならないなら行かない、というのは同感ですね。今はもうどこの編集部も予算をつけてくれないから……もともと予算を用意してもらったことなんてほとんどなかったんですが、ともかく、お金が出ないなら自分の好きなところに行くというほうが強くなりましたね。そもそもネタにできるところにしか、行こうと思わなくなってるかもしれない。
村田 例えばディズニーランドに行っても、記事を作れと言われれば作ることはできる。でもそういうみんなが好きな場所だと、ほかに記事にしたいってライターさんがたくさんいるじゃないですか。専門家もいますしね。なので、ライバルの多いところは自然と避けてますね。
丸山 でも、らむさんはたまに(ライバルの多い現場に)行きますよね。座間(2017年10月に発覚した「座間9遺体事件」の現場)とか。
村田 大島てるさん(事故物件公示サイト「大島てる」の代表)のイベント「事故物件ナイト」に出ているので、そこでネタにしたいなあという事件の現場は写真だけ撮りに行ってますね。でも、結局ハイエナにもなれていないというか、行くのはだいたい現場からマスコミがいなくなってからですね。捜査が進行中の仕事は、警察やらなんやらに怒られるから怖いんですよ。それに僕がやらなくても大マスコミ様が人海戦術で取材してますしね(苦笑)。
丸山 実際、福島取材に入ったのも、らむさんはだいぶ時間を空けてましたよね?
村田 東日本大震災から、5年経ってからでしたね。震災直後は、都内から逃げていってしまった人の代打の仕事がたくさん入ってきて、足を運ぶ暇もなかったんですよ。逆に、ゴミ屋敷なんかはブームになる前からずっと取材をしてきたんだけど、気がついたら記事を読んだ関係者がテレビ番組で取り上げてて、いつのまにか僕が後追いみたいになってました。それはちょっと、悔しさはありましたね。
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