警察官「シャブ中の相手をしている暇はない」……西成あいりん地区から覚せい剤がなくならない理由
#覚せい剤
あいりん地区を歩いてみるとわかるが、何をするわけでもなく、一日中同じ場所にじっとしている男がちらほらといる。この“立ちんぼ”と呼ばれる人物に声をかけると、覚せい剤の受け取り場所を指定されるというわけだ。
「立ちんぼっちゅう仕事は、言ってみれば誰でもできる仕事や。俺が知っている立ちんぼも、元は解体現場で働いていた奴や。あんなの場所を教えるだけや、兄ちゃん(筆者)でもやろうと思えばできるんやで」
立ちんぼに待ち合わせ場所を指定された買い手は、直接その場所に取りに行くことができるそうだ。間に別の人間を挟むことは少ないという。78日間あいりん地区に滞在した筆者でも、すでにどの人間が立ちんぼか、一発でわかる。日々パトロールに励んでいる警察官が、わからないはずなどないのだ。あいりん地区内にある交番勤務の警察官は、こう話す。
「立ちんぼを1人捕まえたところで、また次の立ちんぼが出てくるだけ。イタチごっこ状態だから捕まえる意味ないんだよね。それより今は貧困ビジネス(生活保護費のピンハネ等)が問題になっている。正直言うと、覚せい剤まで手が回らないんだよ」
後日、仕事を終えた立ちんぼの男を尾行していると、男は交番に立ち寄った。外から様子をうかがうと、警察官2人と男が、和気あいあいと世間話を楽しんでいた。立ちんぼの行動から、覚せい剤の密売所などすぐにでも割り出せるとも思うのだが、なぜ警察は動かないのか? 8月の事件のように、あいりん地区では定期的に覚せい剤の密売所が摘発されるが、単なる見せしめのように思えてしまう。
あいりん地区から覚せい剤を一掃できない、いや一掃しない特別な理由があるのだろうか。
(取材・文=國友公司)
●『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』
筑波大学を卒業したものの、就職することができなかった著者は、大阪西成区のあいりん地区に足を踏み入れた。ヤクザ、指名手配犯、博打場、生活保護……マイナスイメージで語られることが多い、あいりん地区。ここで2カ月半の期間、生活をしてみると、どんな景色が見えてくるのか? 西成の住人と共に働き、笑い、涙した、78日間の体験ルポ。
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