急速に普及する顔認証システムが「人民管理ツール」に!? ますます物言えぬ監視国家に……
#中国 #海外ニュース
中国では2017年末時点でコンビニ店舗数が10万を超え、売上規模も2,000億元(約3兆3,000億円)に迫る勢いだ。そんな中、注目されているのが、コンビニのハイテク化だ。スマートフォンに登録した個人情報とネットバンクの情報を利用し、入店から決済まで、QRコードで行うことのできる店員不在の無人コンビニが、次々とオープンしている。
中国ECサイト大手の京東集団(JD.com)は、今年度中に500店舗の無人コンビニをオープンさせると発表しているが、その目玉となっているのが顔認証システムによる決済だ。同社が運営するコンビニやスーパーマーケットでは、昨年10月から顔認証システムによる独自の決済システムを導入し、大きな注目を集めてきた。客はスマホや財布さえも持たずに手ぶらで買い物をし、レジで顔認証を通じ、自動で支払いが完了してしまうのである。
さらに9月20日から、全国の人民病院(国営の大病院)で決済アプリ「アリペイ」の技術を採用した顔認証による支払いシステムが正式に導入された。患者は各病院に設置された顔認証支払いカウンターの前に立ってボタンを押せば、アリペイに登録された顔情報と照合の上、診察費が自動で引き落とされる仕組みだ。これまで支払いのたびに長時間待たされてきた患者にとっては、この上なく便利でストレスフリーなシステムだろう。
こうした顔認証システムは、便利な決済機能としてだけではなく、警察機関でも“活用”されている。特に最新テクノロジー技術が集まる広東省深セン市では、地元警察がこうした技術を全国に先駆けて導入。実験的に、昨年から信号機などに顔認証カメラが設置されるようになった。これは信号無視などを行った歩行者や運転手の顔情報を即座に読み取り、データベースから個人情報を自動検索し、路上に設置された大画面にリアルタイムで表示するもの。同時に、本人宛に罰金の納付書などがスマホを通じて配信されるなど、警察官がいなくても取り締まりが実施できるようになっているのだ。同市では、最新テクノロジーによる“電子警察”が、すでに実用化の段階にある。
「深センでは昨年末からすべての自家用車にRFIDタグ(非接触型読み取りタグ)の搭載が義務付けられ、市内を走る自動車が完全にモニタリングされるようになった。スピード違反や一方通行の逆走、一時停止違反なども自動的にAIが感知し、違反者のスマホに罰金納付書が送られるようになるでしょう。一方人間も、どこで何をしているか瞬時にわかるようなシステムが構築されつつあり、常に監視されている状態です。外出時に犯罪はもちろん、交通違反やマナー違反さえもできないディストピアが、すでにここではできつつあるんです」(広東省在住の日本人貿易商)
便利な世の中になる一方、こうした顔認証システムは中国で確実に「人民管理ツール」として、大きな役割を持つようになった。現在、中国全土には約2億台の監視カメラが設置され、人民は常に顔認証システムとの照合にかけられており、まさにAI監視国家となっている。利便性が向上する一方で、ますます物言えぬ国になってしまうとは、なんとも皮肉な話である。
(文=青山大樹)
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