退去期限を迎えた「京大吉田寮」追い出しに失敗し、大学には大損をこかせた山極壽一総長らに冷たい視線
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大学当局による廃寮化攻撃の続く京都大学の学生自治寮・吉田寮。9月30日、台風の中で、ついに大学当局の通告した寮生の退寮期限日を迎えた。
京都大学では、今年に入って大学の象徴でもあった立て看板の規制を大学当局が強行。これに対して学生は反発し、攻防戦が続いている。
大学の自治と自由をめぐる戦いの台風の目となっている京都大学だが、立て看と並ぶもう一つの主戦場が、この吉田寮だ。
吉田寮は1913年建築の木造2階建て「現棟」、と2015年建築の「新棟」からなる学生寮。運営は、寮生による自治会に委ねられている学生自治の拠点だ。
これまで長い歴史を持つ吉田寮だが、学内の管理強化を目論む、山極壽一総長や川添信介副学長にとっては、目の上のたんこぶ。17年12月に大学当局は、現棟については耐震性を問題とし、新棟については自治会の入寮者名簿が信頼できないとして、全員に退寮を通告。9月14日に至り大学当局は自治会との交渉は「話し合いにならない」と、席を蹴っている。
こうして迎えた退寮期限だが、大学当局が職員やガードマン、あるいは機動隊導入などの追い出し強行する様子は見られない。
というのは、この間、立て看規制や吉田寮をめぐる問題がメディアで大きく取り上げられるようになっているからだ。
去る6月に本サイトの記事(記事参照)に登場してくれた、寮生の上田雅子氏は語る。
「退寮の通告に応じる人は意外と少なくて、まだ100人以上が暮らしています。ここに来て寮を守るために活動に加わる人も増えているんです」
これまで、吉田寮をめぐる問題では寮生の中でも寮を守るために活動する人の少なさも指摘されていた。だが、実際に追い出しが近づいたことによる危機感が、寮生の意識を変えているようだ。
そして、意識を変えているのはメディアや社会の注目だ。今や、吉田寮にはメディアが毎日のようにやってくるようになり、関心を持つ層は広がっている。そして、大学当局の強攻策への批判は、寮生だけでなく京大の教授陣からも聞かれるようになった。
世間の目に晒され、大学当局も強攻策をとることが難しくなっているのだ。
「ここ最近、吉田寮全体が積極的に取材を受けるようになりました。また、興味を持ってやって来る人も増えました。私見ですが、前回の『日刊サイゾー』の記事の効果で、敷居が低くなったみたいで……」(同)
今後、大学当局の打ち出す手段として考えられるのは、電気や水道などのライフラインの遮断。さらに寮生の親に「大学に逆らっている」「過激派に洗脳されている」「まともに就職なんてできないぞ」などの脅し文句を並べて、泣き落とし戦術で追い出しを図るというもの。
また、訴訟を提起して強制執行を行うことも考えられるが、その場合でも数年は要する。
「ここからは、長い戦いになるでしょう。楠木正成の千早・赤坂の戦いのようなものです」(同)
もはや、吉田寮をめぐる問題は、巨大な権力を振るう山極総長や川添副学長らの暴虐に防戦一方の寮生……ではない。むしろ攻守は逆転しつつある。というのも、京大当局は退寮を通告する一方で、その受け皿として「代替宿舎」を準備した。これは民間のアパートを借り上げたものだが、これに誤りがあったのだ。
オンボロな寮よりも設備の整ったアパートに月数百円の家賃で住まわせてやる……と、寮生を転ばせようとしたのだが、目論見は外れて京大当局は誰も住まないアパートの部屋に家賃を支払っている状況。
これが1年も続けば京大当局は年間で1億円余りを損してしまう。必死で追い出さなければならない京大当局。対して、吉田寮側は住んでいるだけで相手に傷を負わせているというわけだ。
こんな事態を招いたのも、強攻策をとった結果。既にこれまでのリベラルな政治的発言は嘘だったのかと信用を失っている、山極総長や川添副学長らの勢力。この上、大学に大損をさせて、最悪な形で歴史に名を残すことになりそうだ。
(文=昼間たかし)
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