清原和博がいまでも続く薬物への誘惑を告白「死にたくなるんですよ」
9月1日放送のラジオ番組『中居正広 ON&ON AIR』(ニッポン放送)のなかで、中居正広が清原和博の自伝『清原和博 告白』(文藝春秋)を読んだ感想を述べた。
中居正広といえば、2014年3月に「週刊文春」(文藝春秋)で薬物疑惑が報じられて以降、表立った活動のなくなった清原和博を、自身のレギュラー番組である『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS系)に出演させるなど、浅からぬ付き合いがある。
清原はその後、2016年2月に覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで逮捕され、懲役2年6カ月(執行猶予4年)の有罪判決を受けるわけだが、そんな清原の『清原和博 告白』を読んだ中居はこのように思いを述べた。
<ああいう事件を別に肯定するつもりもないけども。でも、キヨさんに限らずですけども、“1回の過ち”“1回の失言”とか、なんか、1回失敗しちゃったら、『公に出てる人間はそれぐらいの覚悟を決めてもらわないと困るよ』つっても、そんなに言うほど覚悟なんて…。うーん、決めて入ったわけじゃないし>
続けて中居は<『いけないものはいけない』っていうのはわかるんだけども>とし、清原の犯した罪を正当化するわけではないとしつつも、<1回の過ちであまりにもこう、ちょっと責めすぎじゃないのかなとは思いますよね>と語った。
9月11日には、三田佳子の次男である高橋祐也容疑者が覚せい剤取締法(所持)の疑いで逮捕されたばかり。高橋容疑者の覚醒剤がらみの逮捕は4回目となるが、この例が端的に示す通り、一度覚醒剤の味を知ってしまうと、そこから抜け出すのは難しい。
『清原和博 告白』では、その過ちを「1回だけ」にするための苦闘が赤裸々に綴られている。
本のなかで清原は<覚醒剤というのは、1回手を出しただけで支配されてしまうんです>と語っているが、薬への誘惑はいまでもなくなってはいないと言う。
<気づけば覚醒剤の打ち方っていうのを検索していることもあるんです。薬物依存症(再発)は3の倍数が危ないと言われるらしくて。3カ月、半年、1年、3年……>
清原が覚醒剤を使い始めたのは現役を引退してから。左ひざの故障なども災いし2008年に23年間におよぶ現役生活に幕を下ろした彼は燃え尽きていた。
その心境を清原は、<どこかぽっかりと心に穴が空いたような気がして>と述懐する。家族と過ごす時間が増えて、その点では幸せだと感じたが、それでも、<自分の心の中は満たされてなかった>と語る。
彼の人生にとって、最も充実感をもたらしてくれるものは、やはり野球だったからだ。
<とにかく自分が楽しいと感じられることを探すのに苦労して、野球に対する空白感というのがずっとありました。それで結局、野球ほど夢中になれるようなものはなかった>
引退後の清原は野球評論家や解説者として働く傍ら、バラエティ番組にも出演するようになっていた。しかし、そこで求められる「番長」キャラは、野球をしているときだけのもので、普段の生活における性格とはかけ離れており、違和感が募っていく。
その結果、生活は荒んでいった。酒の量は増え、夜の盛り場で過ごす時間も長くなり、交友関係に品行方正とは言い難い世界の住人も混じり始めた。そこで覚醒剤に出会ってしまう。彼は薬を始めた理由を<自分が何者なのかわからなくて、そういう嫌な自分から逃げたくて、酒を飲んで、その挙句にやった気がします>と語るが、覚醒剤は人生に思い悩む清原にとって、現実逃避の手段となった。
その結果、荒んだ生活を送るようになり、前述「週刊文春」記事をきっかけに家族からも見放され、ますます転落していく。そして、逮捕に至るのだった。
逮捕から2年以上の時が経つが、彼を薬に溺れさせた要因は根本的には解決していない。清原自身も<まだ生きていく力が湧いてきていないっていうのは本音です>と認めつつ、これからも薬との戦いを続けていく決意を語っている。
<これまでは薬に逃げていましたけど、今はその逃げ道もなく、ずっと落ち込んだ自分と戦っていくしないんで、容易なものではないな、と実感しています>
『清原和博 告白』からは、現在の清原がいつもう一度どん底に落ちていくかわからない綱渡りの状況にあることがよくわかるが、それを率直に述べる姿勢には目を見張るものがある。
「もう薬への欲求はないです」などと言い切ってしまえば、あらぬ疑いをかけられずに済むし、本人的にも楽だろう。しかし、それは薬物依存に対して真摯に向き合う態度とは言えない。
清原は嘘をつかずに「病と共に生きる」という態度を表明した。前述の通り、清原を覚醒剤に向かわせた根本の原因はなくなっていない。そこで大事になってくるのは、友人や仕事仲間など、周囲のサポートだろう。本のなかでは、薬物中毒患者が悩みを打ち明け合う集いにも参加してくれるパートナーの女性の存在もほのめかされている。こういった人間関係は清原にとって大きな希望となるはずだ。
清原は薬物依存のなかで鬱病を併発し、<死にたくなるんですよ>とまで語っている。薬物依存との戦いはこれからも長いものとなる。それでも、いつか、野球に関わる仕事をしながら、またかつてのような笑顔を浮かべる清原が戻ってくる日が来ることを切に願う。
(倉野尾 実)
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