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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 窪田正孝『ヒモメン』で演技力を証明

窪田正孝が『ヒモメン』で証明してみせた、“カメレオン俳優”としての豊かな表現力とスタッフからの厚い信頼

■結局、更生できなかったけど……

 バカップルのドタバタ劇を描いてきたこのドラマ。結果的に、ゆり子は翔ちゃんを更生させることはできませんでした。ただ、鴻池剛氏の原作マンガ『ヒモメン〜ヒモ更生プログラム〜』(KADOKAWA)は、「月刊コミックフラッパー」で現在連載中ですし、あそこまでのヒモ男がいきなり真っ当な人間になったとしてもそれはそれでビックリなので、致し方ないのかなと思います。

 まぁ、4話の時点で「好きな事を仕事にしたいから、ずっと ゆり子のそばにいる事を仕事にしたい」という翔ちゃんに「いていいよ」と返事をしていたし、これまで結局翔ちゃんを許してしまうゆり子の姿を何度も見ていたので、こうなるのは視聴者の誰もが想定していたことだったと思います。そう言った意味では、この結末は何の驚きもなく、はいはいそうですよね、という感想です。

 ただ、「絶対に別れない!」と譲らなかった翔ちゃんが、最終回ではゆり子の幸せのために彼女の元を去り、初めて自分から進んで働きました。ゆり子に寄生し、働かないことに全力を尽くしてきたヒモにとっては、これは大きな進歩です。視聴者も、「翔ちゃんが身を引くとは思わなかったからびっくりしたけど、そこにさえ愛を感じた」「1時間だけでも働いた翔ちゃんはすごく尊かった」と大感激。中には、「ヒモメンに泣かされる日が来るとは……」と涙した人までいたようです。

 なお、変わったのは翔ちゃんだけでなく、ゆり子も同じ。「更生させる」という意気込みはどこへやら、今話では「ホームレスになっても一緒にいようって言ったくせに!」「今の私の夢はずっとずーっと翔ちゃんと一緒にいること!」なんて、すっかり翔ちゃんを養う気満々です。それに、ヒモ男好きの聡子だけでなく、ライバルだった池目先生や、ヒモを毛嫌いしていたこのみちゃん、さらには師長までもが、翔ちゃんとゆり子のために結託しました。この展開は、王道中の王道ながらも、観ていて気持ちがよかったです。

 全7話を通してヒモ男・翔ちゃんの人間としての成長を感じられたこの作品。「ヒモ男の成長」というと、なんだか幼稚で低レベルなことのように思えますが、今の世の中じゃ、自分の気持ちに素直に生きることは簡単なようで結構難しかったりするし、常識や世間体にとらわれない翔ちゃんの生き方って、とっても理想的です。そんな翔ちゃんの、ブレない真っ直ぐな姿に感化され、ゆり子や周りの人たちと同じように、「こういうのもアリかも」って思わされた視聴者がたくさんいたんじゃないでしょうか。

 

■窪田正孝がカメレオン俳優と呼ばれるワケ

 ストーリーのほか、この作品を振り返る上で欠かせないのは、何と言っても、窪田くんの存在。“人たらし”な翔ちゃんを、愛嬌たっぷりに演じてくれました。役が役なだけに、アンチがドッと増えたり、炎上の要素も十分あったかと思いますが、ただかわいかったり、かっこいい姿を見せるのではなく、ゆり子に甘えるときは脱力感に溢れた姿を、困難に立ち向かうときには背筋を伸ばしてキリッとキメて演じ分けることで、“ゆり子に一途な翔ちゃん”というヒモ役に説得力を持たせていたように思います。

「ヒモ以前に性格がクズすぎ」「窪田くんでもさすがに無理」という声が多かった視聴者の反応を、最終的には「ヒモはヒモでも一途だから愛せる」「翔ちゃんみたいなヒモならアリなのかもしれない」というところまで持ち上げたのは、窪田くんのそういったところが大きく関係しているのではないでしょうか。何より、世間の「ヒモ男」のイメージも、窪田くんのおかげでネガティブなものからポジティブなものへ変化しつつあるように感じます。制作陣は、窪田くんの高い演技力を信頼していたんでしょうね。1話を観た後に「この先きっと炎上するだろう」なんて思っていたことを謝りたいです。今作でまた一つ、演技の幅を広げた窪田くんの次回作が楽しみです。

 そして、タッちゃんと同じくらいハイスペックで、黙っていればイケメンなナルシスト・池目先生を演じた勝地くんも、作品を大いに盛り上げてくれました。池目先生って、やることなすことがことごとく裏目に出てしまうというコメディリリーフ的立ち位置ですが、顔芸だったり、セリフのニュアンスだったり、勝地くんのコミカルなお芝居が冴えに冴えわたっていて、結果的に、翔ちゃんと同じくらい愛されキャラになったと思います。

 また、川口春奈ちゃんの役割も大きかったと思います。彼女が明るく天真爛漫にゆり子を演じていたから物語が深刻にならなかったので、「バカだなぁ~」と笑ってドラマを観ることができました。

 公式サイトでは、「頑張ることに疲れた人々を癒す、痛快コメディ」と謳っていましたが、まさにその通り。翔ちゃんとゆり子のバカップルぶりは頭の中をすっからかんにして観れたし、窪田くんのクシャッとした笑顔で、1週間分の疲れを癒すような、土曜の深夜に“ちょうどいい”ドラマだったと思います。

 前クールの『おっさんずラブ』からの流れもありましたし、テレ朝さんにはぜひこの雰囲気を貫いてほしいところだったんですが、来期は、木村佳乃主演でドロッドロの不倫モノなので、雰囲気がガラッと変わりそう……。今度は、池目先生が幸せになるお話が見たいので、スピンオフとかどうですかね、テレ朝さん。

(文=どらまっ子TAROちゃん)

最終更新:2018/09/13 20:00
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