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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『絶対零度』数字的には大成功でも…

フジテレビ月9『絶対零度』10.8%有終の美! 数字的には“大成功”でも内容は……

■そんなにガッカリはしてないけど。

 前回のレビューで、最終回の予想として「誘拐ビジネスについての大仕掛けは、あんまりきれいに畳まれない」「上戸彩についても、出演シーンが限られていることからして、やっつけで処理される」「ミハンと監視社会云々についての解釈もかなり危ういので、軟着陸させるのがやっと」などと書いて予防線を張っていたので、プロットの感想としては「まあまあそれなりに」という感じです。思ったより、ちゃんとしてた。

 で、肝心の「せめて井沢警部補が抱える復讐心と心の闇だけは、きっちり成仏させてあげてほしい」というところです。

 井沢さんの巨大な悲しみがスパークする瞬間、そのお芝居と、シナリオに書かれた感情の臨界点がちゃんと同期できるかどうか、というところに注目して見ていたのですが、これはもう、全然ガッカリでした。

 井沢さんにスパークが訪れたのは、東堂が刺された瞬間でした。東堂とは、その直前に、井沢に「おまえの嫁と子どもが死んだのは基本オレのせいだけど、それは社会的リスクだから。それがオレの正義だから」と言い放った人間です。私は一視聴者として、東堂のそんな言い分はまったく支持できないし、そいつが「黒幕を暴く!」とか言いながら不用意に外を歩いていたら、刺されてもしょうがないと思う。だから、このタイミングで井沢さんの巨大な怒りと悲しみが臨界点を迎えるという展開には、どうにも乗れなかったです。

 なんだろうなぁ、展開的には東堂さんが裏で糸を引いてたら面白いけど、東堂さんが全部悪いということになるといろいろ辻褄が合わないから、もうひとり“黒幕”つくっとけ、みたいな急造感、姑息感、適当感しかなかったんですよねえ。

 最後、井沢さんは“黒幕”に銃を向けますが、射殺を思いとどまります。

「みんなの声が聞こえて……」

 と咽び泣くわけですが、その“みんな”を表現する回想シーンに東堂さんも入ってるんですよね。この期に及んで、どういう気持ちで東堂さんのことを思い出してるわけ? おまえさん、嫁と娘が死んでんねんで! と思いました。

■それでも泣けちゃう沢村一樹

 振り返ってみれば、『絶対零度』で語られた、あらゆる人の死や人の悲しみ、人の怒りみたいなものに、まったく共感できなかったというのが正直なところです。

 前にも一度書きましたが、作り手側が「人殺しのドラマ」を愛していないことが、すごく伝わってくる。だから人物描写が残酷になりきれないし、残酷になりきれないことが、結果的にキャラクターたちをもっと残酷な(今回の東堂さんとか)扱いにしてしまっているように感じました。特に前半は、「テンポ出せ!」という強いディレクションが入っていたことはお察ししますが、それでももうちょっとね、体温みたいなものがほしかったですよね。

 シナリオについてはそういう感想ですが、沢村一樹の芝居がドラマ自体を大きく引き上げたことは記しておかなければなりません。最終回も、基本的には「なんだよそれ、ふざけんなよ」とブーブー言いながら見てましたが、クライマックスの井沢さんの振る舞いには、ちょっとウルッときちゃいました。まったく共感していないのに、その怒りと悲しみの純度だけが流れ込んでくる感じ、お芝居を見る快感に浸ることができました。

 あと、大きな見どころとして気に入っていたのは本田翼が男たちを蹴るシーンです。いいよねー、蹴り。そういえば、最終回の副題が『復讐者に憐れみを』という韓国映画の丸コピでしたが、この映画でも、みんな大好きペ・ドゥナちゃまが男を蹴りまくっていましたね。素敵でした。お好きな方はどうぞ。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

最終更新:2018/09/11 20:00
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