みやぞんは24時間テレビ史上最も過酷なマラソンを乗り切れる? アンガールズ田中卓志や村上春樹も語る100キロマラソンの厳しさ
8月25日18時30 分よりスタートする『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ)。毎年恒例のチャリティーマラソン企画はANZEN漫才のみやぞんが担当することになっている。
今回、みやぞんが挑むのは、単なるマラソンではなく、トライアスロン。水泳1.55キロ、自転車60キロ、そして長距離走100キロを走り抜けることになる。オリンピックにおけるトライアスロン競技は、水泳1.5キロ、自転車40キロ、長距離走10キロなので、こなさなくてはならない距離のケタが違う。
みやぞんは33歳と歴代のチャリティーマラソンランナーに比べて若く、加えて、高校時代は野球部のエースでピッチャーを担っていたほどスポーツ万能な芸人だが、この厳しい条件にはさすがに心配する声が多くあがっている。
しかも、気象庁が「一つの災害と認識」とすら言及したこの酷暑のなかである。最近ではだいぶ涼しくなる日も増えたとはいえ、それでもうだるような暑さのなか直射日光を浴び続ければ熱中症で体調を悪くする危険性も十分ある。
特に100キロのマラソンは厳しいものがあるだろう。100キロマラソンの過酷さは、これまでの経験者も語るところだ。
2006年にチャリティーマラソンを担当し、100キロマラソンに挑戦したアンガールズの田中卓志は、2017年7月26日放送『アッパレやってまーす!』(MBSラジオ)にて<恐ろしいことに、足って曲がらなくなるんです。信号待ちのときに、『曲がらなくなるから、屈伸してください』って言われるんですよ。ぐーって、5秒くらいかけてゆっくりしないと、もうヒザが何も動かない。で、ゆっくりまたグーッと伸ばす。だからもう、それくらい限界まで追い込んで>と、100キロを走るにあたっての身体のダメージを語っている。
それは、フルマラソン経験者でも同じようだ。マラソンをライフワークとして日夜走っていることでよく知られる作家の村上春樹ですら100キロのマラソン体験は過酷であったと綴っている。
42.195キロを超えるマラソンは「ウルトラマラソン」と呼ばれるが、彼は毎年6月下旬に北海道のサロマ湖で行われる「サロマ湖100kmウルトラマラソン」に参加したことがあり、そのときのことをエッセイ集『走ることについて語るときに僕の語ること』(文藝春秋)のなかで綴っている。
フルマラソンを何度も走りきっている上級者だけあり、走り始めはいたって快調だったのだが、異変は55キロの休憩地点で起きる。
シャツやパンツを替え、軽い食事をとり、シューズを履き替え(足がむくみだしているので0.5サイズアップさせたシューズを履く)、トイレを済まし、ストレッチで身体をほぐしてからスタートした瞬間、自分の身体が通常の状態ではなくなっていることに気づいたというのだ。
<走り出したとたんに、自分がまともに走れるような状態にないことに気づく。脚の筋肉がこわばり、固まった古いゴムのようになってしまっている。スタミナはまだじゅうぶんにある。呼吸も正常で乱れてはいない。ところが脚だけが言うことを聞いてくれない>
もう脚が言うことをきかないので、腕を大きく振り、その動きを利用して下半身を動かしていくという、上半身中心の走り方に切り替えていく。もはや早歩きぐらいのスピードにしかならないが、走り続けるためにはそのように無理をするしかなかった。
<とんでもなく苦しかった。緩めの肉挽き機をくぐり抜けている牛肉のような気分だった。前に進まなくてはという意欲はあるのだが、とにかく身体全体が言うことを聞いてくれない。車のサイドブレーキをいっぱいに引いたまま、坂道をのぼっているみたいだ>
あまりの苦痛に、<僕は人間ではない。一個の純粋な機械だ。機械だから、何も感じる必要もない。ひたすら前に進むだけだ>という言葉をマントラのように頭のなかで唱え続け、なにも考えないようにしながらひたすら身体を動かして前に進んでいく。
すると、75キロあたりで<抜ける>感覚があったという。全身の激しい苦痛は鳴りを潜め、頭のなかも<自分が誰であるとか、今何をしているだとか、そんなことさえ念頭からおおむね消えてしまっていた>という状態になったと綴っている。
村上氏は<抜ける>といった表現におさえて露骨な書き方はしていないが、ここでエンドルフィンが出て「ランナーズハイ」になったということなのだろう。結果的にリタイヤすることはなく11時間42分のタイムでゴールできたのだが、数日間は身体の痛み(特に手首は赤く腫れ上がった)に苦しめられ、また、その後、数年にわたって「走ること」へのモチベーションが低下したと『走ることについて語るときに僕の語ること』のなかで綴っている。
アンガールズ田中や村上春樹の話を聞くと、100キロマラソンがいかに過酷かということがよくわかるが、今回みやぞんが挑戦するのはトライアスロン。
通常のトライアスロンの順番通りにやるのであれば、水泳、自転車と競技をこなしてきた後に、この100キロマラソンをこなさなくてはならない。ただでさえ厳しい100キロマラソンなのにも関わらず、2種目で疲労を蓄積した状態で臨まなくてはならないというのは大丈夫なのだろうか?
また、これまでのチャリティーマラソン参加者ならばランニングの練習だけしていればよかったのが、今回は3種目の練習を同時進行でこなさなくてはならない。特にみやぞんは水泳が苦手との情報もあり、事前練習の質と量という点でも不安が残る。
せっかくのチャレンジなのだからゴールしてほしいという思いもあるが、くれぐれも事故のないようにと願わずにはいられない。
(倉野尾 実)
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