父を思う気持ちと娘を思う気持ち――ドラマ『チア☆ダン』第6話
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(前回までのレビューはこちらから)
私は一人っ子で、兄弟はいない。親との関係は、とりたてて良くもなく悪くもなく、いたって普通であったと思う。そのため、反抗期などで親との関係がこじれたとか、逆に大人になっても一緒に旅行に行くほど仲が良いなどというのが、今ひとつ実感できずにいる。
特に、若い女性タレントが、「今日はお父さんとお出かけしました!」などとSNSでつぶやいているのを見ると、なんとも不思議な気持ちになる。イメージとして、女の子はある年齢になると、「お父さんなんて嫌い」という感情が生まれてくるものと思っているからかもしれない。
ドラマ『チア☆ダン』(TBS系)第6話。今回は、ROCKETSメンバーの親たちが騒動を巻き起こすこととなった。
子供を助けようとして事故にあってしまった、チアダンス部顧問の漆戸(オダギリジョー)。けがを負って入院するも、深刻な状態ではなく、元気な様子。見舞った部員たちも、その様子に一安心する。
チアダンス部では、いよいよ新コーチ、わかば(土屋太鳳)の姉あおい(新木優子)による指導が始まる。あおいは、福井中央高校のJETSに対抗抗するためには、もっとメンバーを増やす必要があることを告げる。わかばたちは、再び部員集めの課題を突き付けられたのだ。
校長(阿川佐和子)は、漆戸が復帰するまで代理の顧問を決めようとするが、ROCKETSのメンバーは、「先生が復帰するまで自分たちで何とかする」として、その申し出を断る。しかし、漆戸の容態は、思っていた以上に深刻だった。脊椎を損傷していて、再び教壇に立つことができなくなるかもしれないというのだ。
そんな時、メンバーの穂香(箭内夢菜)が練習中に足をねんざしてしまう。大きなけがではなかったが、穂香の父親(宍戸開)をはじめとした保護者が学校に押しかけ、顧問が不在であることを理由に、廃部を迫ったのだ。
ここでまず、穂香と父親の関係が出てくる。高校生にもなって、ねんざぐらいで親が出てくるのもどうかと思うのだが、最近の学校ではよくあることなのかもしれない。当然、父親としても、娘のことを大事に思っているから苦情を言うのだろう。ただ、その根底には、チアダンスをやることを、あまりよく思っていないような心情も見え隠れする。
それは、他の保護者も同じだった。中華料理屋を営む、妙子(大友花恋)の父(星田英利)も、全米制覇を目指すとなれば交通費もバカにならないと懸念を示す。お店の手伝いをよくしており、親子の関係は良好であるような、妙子のところでも、このような思いのすれ違いは起きるのだ。
廃部を推し進める教頭の桜沢(木下ほうか)だったが、部員の頑張りが伝わったのか、職員室内ではROCKETSを応援する空気が出始めていた。そして、校長は、部の存続を教頭に一任することとする。
桜沢は、学校の運営を任される立場であるとともに、ROCKETSメンバーの麻子(佐久間由衣)の父親でもある。麻子は、そんな父親のことを「9割うざい、1割いないと寂しい」と評する。
やはり、このあたりが、思春期の女子の標準的な思いなのではないだろうか。しかも、父親であるとともに、自身の通う学校の教頭であるというのは、また微妙な感覚だろう。ただ、それは麻子から見た場合だけではなく、父の視点で考えても、難しいところはあると思う。
職員室に「多忙化防止」といった言葉が飾られていることからもわかるように、今、学校は“経営”も考えなければならない時代である。公務員的にただ教育をする、というだけではダメなのだ。
チアダンス部の代理顧問をと申し出る教師に、「すでに多忙だから」と言ってNGを出すのも、教頭の大事な仕事なのである。決して、娘が自分の意にそわないチアダンスをやっていることを、阻止したいというような意地悪な気持ちではないだろう。
回復の見込みがたたない中、漆戸の妻(松本若菜)は、漆戸が指導のためにまとめたノートをわかばに手渡す。そこには、ROCKETSに対する漆戸の思いが詰まっていた。わかばは、漆戸の病状が思わしくないことをメンバーに伝え、ノートを見せる。
「私たちのことをこんなに考えてくれていた」と感激するROCKETSのメンバー。あらためて、漆戸が自分たちにとって、どれだけ大切かを知るのだった。
チアダンス部の存廃を任された教頭の桜沢は、漆戸を見舞い、「なぜ教師をやっているのか?」と問う。
漆戸の答えは、チアダンス部のメンバーが頑張っている姿を見て、彼女たちの夢が自分の夢になったから、というものだった。
メンバーに必要とされている顧問と、そのメンバーの姿に励まされる教師。それはまるで、この物語で描かれている父と娘のように、お互いを思い合う関係になっていたのだ。
教頭が帰った後、ROCKETSは、病院の庭でチアダンスを披露し、漆戸を励ます。「誰かを励ます」というチアスピリットが、ここでもまた発揮されたのである。
学校には、チアダンス部員の保護者が集まっていた。廃部か、存続か。
その頃、チアダンス部に、ライバルであったチアリーダー部員が訪ねてくる。チアダンス部に入れて欲しいと願い出るのだ。そしてそれを受け入れるわかば。ROCKETSのメンバーは、一気に20人にと膨れ上がった。全員で、保護者の集まりに乗り込み、存続を申し出る。
それでもまだ、顧問がいないことを問題視する声が上が る中、教頭から出たのは、思いがけない言葉だった。
「私が顧問代理をやります」
その言葉にも後押しされ、チアダンス部は存続が決定する。
保護者会の後、桜沢は、校長につぶやく。
「私は漆戸先生みたいに愛されることはないでしょうが……」
桜沢もまた、自信なんて持てずにいたのだ。でも、自信がないことは、きっと悪いことではない。わかばだって、麻子だって、みんな自信のないところからスタートしている。漆戸だって、顧問を始めた頃は自信を持てずにいた。「自分はまだまだだ」、みんなそう思いながら努力を続け、気がついたら壁を一つずつ乗り越えているのだ。変な自信を持って慢心してしまうより、気弱なくらいのほうが、人に優しくできる気がする。
ドラマも中盤を越え、次回は、これまで密かに進行していた、メンバーの恋愛話が出てきそうだ。青春ドラマの醍醐味でもある色恋沙汰に、メンバーはどう関わっていくことだろう。
(文=プレヤード)
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