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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > “8人の峰不二子”が活躍する映画
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.492

“8人の峰不二子”が活躍する『オーシャンズ8』女を消耗品扱いにしてきたハリウッドへの挑戦状!!

 物語の前半は、サンドラ・ブロックとケイト・ブランシェットの2大ベテラン女優が、人気のピークにあるアン・ハサウェイをカモにしようと企む形で進んでいく。厚化粧でオバハン度高めのサンドラとケイトが、テレビの中で周囲にちやほやされているアンハサを睨んでいる様子は、相当におっかない。このシーンを観ていて思い出すのは、ドキュメンタリー映画『デブラ・ウィンガーを探して』(02)だ。女優のロザンナ・アークエットが監督したもので、“ハリウッドでは40歳を過ぎた女優はお払い箱になる”という映画業界の不文律に疑問を感じ、同じ問題に直面する女優たちをインタビューして回っている。メリル・ストリープのように年齢を重ねても映画に主演し続ける大女優もいるが、それは極ひと握り。男優たちが年齢にさほど関係なく活躍しているのに比べ、女優には賞味期限が大きく付きまとう。40代を迎え、演技力に磨きが掛かり、女としての深みも増しているのに、ハリウッドでは居場所がなくなってしまう。年齢を感じさせないよう、多くの女優は美容整形に励むことになる。

顔面迫力がハンパないサンドラ・ブロックとケイト・ブランシェット。ハリウッドをサバイバルする女のたくましさが溢れている。

 デブラ・ウィンガーがハリウッドから一時的に引退した1990年代に比べれば、結婚&出産などを経験した女優がハリウッドで活躍を続けるケースは増えてはいる。それでも、『ゲティ家の身代金』(17)では主演女優のミシェル・ウィリアムズよりも助演男優マーク・ウォールバーグの出演料のほうが遥かに高いなど、女優に対する不当な扱いはまだまだ多い。さらに今回はオーシャンズの新しいメンバーとして、カリブ出身のアーティストであるリアーナ、アジア系の若手女優オークワフィナ、インド系コメディエンヌのミンディ・カリングといったマイノリティー層の女性たちが加わっている。さながら今回の『オーシャンズ8』は、R40女優&マイノリティーたちのハリウッドへの挑戦状でもあるかのようだ。

 クライマックスは、いよいよNYのメトロポリタン美術館で開催されるメットガラのパーティー会場へ。それまでオバハンっぽいメイク&ファッションだったデビーたちだが、一転してゴージャスにドレスアップして夜のメトロポリタン美術館に乗り込む。まるで『ルパン三世』の人気キャラ・峰不二子を思わせる鮮やかな変身ぶりだ。権力や男たちになびくことなく、自分の意思で行動する女の強さと気高さがデビーたちにはある。

 仮釈放中の身であるデビーは今回の計画に失敗して捕まれば、長期刑は免れない。さすがのデビーも緊張を隠せない。計画を実行する直前、ひとりになったデビーは自分自身に向かって呟く。「私自身やみんなのためにやるんじゃない。世界のどこかで犯罪に憧れる8歳の女の子のためにやるのよ」と。映画の中で描かれる犯罪は、一種のイリュージョンだ。夢見ることすら難しくなった世知辛い世の中で、みんながアッと驚くイリュージョンを打ち上げたい。常識や偏見に縛られることなく、8人の女たちは自分らをダイヤ以上に輝かせる壮大なイリュージョンに挑戦する。
(文=長野辰次)

『オーシャンズ8』
監督・脚本/ゲイリー・ロス 脚本/オリビア・ミルチ プロデューサー/スティーブン・ソダーバーグ 
出演/サンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、ミンディ・カリング、サラ・ポールソン、オークワフィナ、リアーナ、ヘレナ・ボナム=カーター
配給/ワーナー・ブラザース映画 8月10日(金)より全国公開
(C) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
http://wwws.warnerbros.co.jp/oceans8

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最終更新:2018/08/11 21:00
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