現代篇なしでも違和感ないが、予告に大物女優!! すずが闇墜ちする『この世界の片隅に』第4話
#ドラマ #TBS #松坂桃李 #どらまっ子 #この世界の片隅に #松本穂香
■原作にはない感涙の子別れシーンと気になる設定の改変
第4話では、尾野真千子演じる径子の母親としての一面もクローズアップされました。径子が亡くなった夫の実家に残してきた長男の久夫(大山漣斗)が、ひとりで北條家を訪ねてきました。久々の再会を喜ぶ径子は、サンからそっと手渡された牛肉の缶詰を開け、精一杯のごちそうで久夫をもてなします。まだ子どもなのに、久夫はすごくしっかりしています。戦時下では、子どもも呑気ではいられません。久夫は父方の家を継ぐために、母・径子にその決心を告げに広島市から一人で来たのでした。息子の成長ぶりがうれしい反面、とても哀しく径子には感じられます。その晩は遅くまで、晴美も加えて母子3人でトランプ遊びに興じるのでした。
径子の長男・久夫が北條家を訪ねてくるエピソードは、原作にはない岡田惠和脚本のオリジナルシーンです。久夫は原作でも劇場版でも、名前は出てくるものの、実際には登場しません。また、径子と別れて山口で暮らしていることになっていました。実写ドラマ版では山口ではなく、広島市で暮らしているというのが気がかりです。径子たち母子3人が楽しげに夜更かししている場面を見てしまっただけに、その後のこの母子を襲う惨劇を思うと、胸が掻きむしられる思いです。原作&劇場アニメ版と違って、実写版では誰が生き残り、誰が戦死するのかがはっきりと分かってしまいそうです。
そして第4話のエンディング、ようやく水原哲(村上虹郎)の登場です。周作の過去を知ってしまったすずの前に、タイミングよく幼なじみの水原が現われ、人妻・すずの心は思わずよろめいてしまいそうになります。すずも水原も周作も、そしてリンも、自分たちにこの後どんな人生が待っているのか知ることもなく、愛する人への想いを胸に秘めながら戦時下の日常を生きていくのでした。
■『このせか』とリンクする、もうひとつの世界
今回、昭和19年の世界に非常にスムーズに入っていけたのですが、予告編でその原因が分かりました。第4話は榮倉奈々が登場する現代篇が冒頭にもエンディングにもなかったのです。榮倉奈々と古舘佑太郎のちょいウザなやりとりがない分、すずたちが生きている世界にストレートに感情移入することができました。現代パートがないことにまるで違和感がなかったのって、製作サイド的にはどうなんでしょうね?
さて次回予告では、介護の仕事から逃げ出した佳代(榮倉奈々)の「世界でいちばん好きな人」が現われました。ちらっとしか映りませんでしたが、大ベテラン女優の香川京子さんです。小津安二郎監督や黒澤明監督の名作映画に出演した名女優です。現代篇とすずたちが生きた時代を結ぶキーパーソン的な役割を果たす節子役だそうです。節子の口から、すずや周作のその後が語られるのでしょうか。俄然、現代篇が気になってきました。
第4話の視聴率は9.2%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)でした。前週の9.0%からちょっぴり微増です。すずの闇落ちに続いて、視聴率まで爆落ちせずに済みました。第1話~2話を様子見していた劇場アニメ版のファンは去ったかもしれませんが、ここからジワジワと新しい視聴者を増やしていきたいところです。
こうの史代ファンには、もうひとつニュースがあります。今晩、8月6日(月)の夜7時30分からはNHK総合で、こうの史代のもうひとつの代表作を原作にした常盤貴子&川栄李奈主演ドラマ『夕凪の街 桜の国2018』がオンエアされます。原爆が投下された広島で暮らしていた人たちが、その後どんな人生を過ごしたかを描いたものになります。『この世界の片隅に』とかなりリンクする物語です。
8月15日の終戦記念日を直前に控えた次週の第5話では、すずにどんな運命が待っているのでしょうか。しっかりと見届けたいと思います。
(文=長野辰次)
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