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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 朝ドラ常連女優が艶技で新境地
ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

TBS『このせか』に対抗!? 朝ドラ常連女優・徳永えりが艶技で新境地

 現在放送中の朝ドラ『半分、青い。』も、ヒロインの恋愛感情がリアルに描かれていたが、さすがにここまでは不可能だろう。

 この朝ドラから最も遠いドラマで主演を務めているのが、『梅ちゃん先生』『あまちゃん』『わろてんか』の3本の朝ドラに出演していた徳永だというのが面白い。

 雑誌「ピチレモン」(学研プラス)の読者モデルとしてキャリアをスタートした徳永は、2004年のドラマ『放課後。』(フジテレビ系)で女優としてデビュー。10年に仲代達矢と共演した映画『春との旅』(小林政広監督)で、その演技が高く評価され、日本映画批評家大賞新人女優賞を受賞している。

 前クールには『ディジー・ラック』(NHK)と『ヘッドハンター』(テレビ東京系)、今クールは『健康で文化的な最低限度の生活』(フジテレビ系)にも出演しており、近年は脇で印象に残る女優というイメージが定着しつつあったが、『恋のツキ』が面白いのは、脇で生かされていた彼女の女優としての特性が、主演でも成立していることである。

 もっと言うと、本作の面白さは、普通なら主人公にならないような人生を送っている、自己評価が低くて、やや打算的な生き方をしている(つまり、どこにでもいる普通の)女性がけなげに暮らす姿を描いていることだ。

 ワコは、地味で華がないが、それ自体が色気につながっている。

 年齢も関係あるだろう。徳永は現在30歳で、10代や20代だったら、この生活感のにじみ出た、いやらしさは生まれなかったかもしれない。 

 日本のドラマ、特に地上波のドラマはどんどん「性」が描けなくなっており、それが女優の演技の幅を狭めている。このドラマも脱がないところに不自然さは感じるものの、性的な描写から逃げないという点と徳永の女優としてのスタンスは応援したい。朝ドラ独り勝ちの中、他のドラマが勝負できる場所は、本作のような、生々しい性描写なのかもしれない。30代になって、新しい一歩を踏み出した徳永えりが、どこに向かうのか楽しみである。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

最終更新:2018/08/03 14:00
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