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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 朝ドラ常連女優が艶技で新境地
ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

TBS『このせか』に対抗!? 朝ドラ常連女優・徳永えりが艶技で新境地

フラーム公式サイトより

 夏クールの連続ドラマには、NHK朝ドラで主演、あるいは脇で注目された女優が多数出演している。それだけ、朝ドラが若手女優の登竜門となっているということなのだろう。『この世界の片隅に』(TBS系)に至っては、出演俳優のほとんどを朝ドラ出身女優と俳優で固めている。まさに“石を投げれば朝ドラ女優に当たる”という状態なのだが、木曜深夜に放送されている『恋のツキ』(テレビ東京系)の徳永えりもその一人である。しかし本作は、最も朝ドラから遠い作品だ。

「モーニング・ツー」(講談社)で連載中の新田章の漫画が原作で、主人公は映画館で働く31歳のフリーター・平ワコ(徳永)。同棲中の恋人・青井ふうた(渡辺大和・黒猫チェルシー)と、このまま結婚するのかなぁと思っていたワコだが、ある日、映画館で男子高校生の伊古ユメアキ(神尾楓珠)と知り合う。

 テレビドラマの恋愛描写は会話劇に偏りがちで、性的な場面が描かれることは少ないのだが、本作は奮闘している。

 冒頭でワコは、ふうたから「してよ」と言われ、口淫を始める。第2話でもワコはユメアキに口淫するのだが、どちらもカメラアングルを工夫することで、なんとか深夜ドラマで放送できるものとなっている。

 ワコのモノローグでは「本当は毎晩、めちゃめちゃにイカされたいけど、そしたら朝起きるのが大変だから、早いふうくんは助かる」「今日もふうくんは薄かった」「この匂い落ち着く」という本音が吐露される。そして、「このままずっと一緒でいいんだよね」「もうすぐ32だし」と続くのだが、同棲している2人の性生活を隠さずに描いたことで、ドラマのリアリティが、グッと深まった。仕事に行く前にワコがメイクをする姿や、薄着に短パンで料理する姿もやけに生々しくて、生活感がある。

 ふうたとの生活を大事だと思う一方で、ユメアキとの出会いに胸を焦がすワコ。忘れ物をきっかけに連絡先を交換することに成功し、デートしようとしたり、ユメアキのことを思って自慰をする場面もある。その後、酔っ払って帰ってきたふうたに求められ、欲情したふりをして、ユメアキのことを思いながらセックスする――。

 こういう一つ一つの場面が、ワコという女性の輪郭を作っていて、それなりに純情でそれなりにエロい31歳の女性という人間像が見えてくる。画面がビスタサイズのためか、(それこそ、ワコのバイト先のような)単館系の映画館で上映されている映画のようだ。

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