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「捨てられない」ではなく「合理的だから」! ゴミ屋敷は”正義”なのか? 

■ベトコンになりたかった

 ちなみに、この父親は学習塾を経営しており、そのかたわら、参考書用に高校入試の解説を多数執筆。頭脳明晰なところが、逆にタチ悪いのだ。他とは相いれない緻密なロジックを独自に組み立て理論武装し、人の説得の付け入る隙をなくしてしまった。“変わり者”と言えば、それまでだが……。補足情報だが、この父親の最終学歴は東京外国語大学である。

「(大学では)ベトナム語を専攻していた。ベトコンになりたかったの。いかに日本を抜け出してベトコンに飛び込むかって考えていたら、周りの連中とか教授と全然合わなくて、行く気なくしてやめて」

 ベトコンを目指していたほどである。はっきり言って、メチャメチャ手ごわい。ロジカルに反論してくるだけでなく、ハートも強い。例えば、彼は食器洗いで絶対に洗剤を使わない。理由があるのだ。

「水と布で汚れを落としちゃうよ。殺菌、必要ないでしょ? なんで(洗剤が)必要なのか、よくわからない。食中毒になんか、一回もなったことない!」

 そんなことを言いながら、いきなりタバコを吸い始める彼。

「体には良くないものだろうとは思いますけどね。でも、目の敵にするものなのかどうかはわからない。でも、いいんだよ。抵抗力つくよ?」

 そんな荒れ果てたキッチンで作るパスタを番組スタッフに振る舞おうとするから、この人は困りものだ。でも、信念があるので、まるで躊躇しない。

■いきなりふすまを破壊し始めた主

 独特な感性の父親に閉口しつつ、娘さんは実家の片付けを開始。すると、3時間後には台所が見違えるようにキレイになった。モノは片付けられ、油は拭き取られ、落ち着いた空間に様変わり。

「キレイになったねえ。ただ、1人で動くという点に関して言うと、これからまた、ここに(モノが)バァーッとなりますよ」

 こだわりの配置が崩れたことに納得がいかない父親。彼の中では、モノが溢れかえることに正義があるのだ。

 しかし、そんな父親が突如として片付けに協力的になった。どうやら、キレイになっていく我が家を見て、心境に変化が起こった模様。そして、彼自身も掃除に協力し始めた。例えば、押入れにある物を出し入れする際、ふすまを邪魔に思った彼は「壊したほうが早い」と破壊してしまった。ふすまの有無よりも、作業のしやすさを優先する父親。これも、彼の内にある合理性ゆえだろう。

 最終的には改心した父親であったが、正直、かなりの手ごわさだった。その理由は、彼の頭脳の明晰さだった。理論武装したゴミ屋敷の主は難敵である。「モノが溢れかえることこそ正義」「合理性を優先するから汚い」「汚いですけど何か?」……。

 今まで、バラエティ番組で数え切れないほど取り上げられてきたはずなのに、まさか「ゴミ屋敷」が次の新しいフェーズへ突入するとは夢にも思わなかった。

(文=寺西ジャジューカ)

 

 

最終更新:2018/07/31 18:00
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