“普通”であることの尊さとそこから踏み出す勇気――ドラマ『婚外恋愛に似たもの』第5話
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若い頃はわからなかったのに、年を重ねるごとに痛感することがある。
そのひとつが、「普通であることの幸せ」だ。昔はとにかく「人と違うことが偉い」「自分にしかできないことをしたい」と思い込んでいたものだが、普通に働き、普通に結婚をして、普通に子供を育てていくということが、どれほど大変なことであるか、思い知るようなった。
dTVで配信されている、栗山千明主演のドラマ『婚外恋愛に似たもの』第5話。今回登場したのは、そんな「普通」の生活をしている主婦だった。
アイドルユニット「スノーホワイツ」のグッズ売り場で、美佐代(栗山千明)は、真美(安達祐実)という女性と出会い、ランチに誘われる。彼女ももちろんホワラーで、ジルさま(Da-iCE・和田颯)推しだという。真美はとにかく「普通」に暮らしたいと願い、娘(矢崎由紗)にもそう言い聞かせているが、夫(野間口徹)が突然転職、塾の講師となり、メディアで有名になってしまう。姑(松金よね子)との確執や、ママ友からの嫉妬に悩み、「夫を殺したい」とまで思うようになる。
真美がジルさまにハマったのは、娘が見ていた雑誌がきっかけだった。ふとめくったページにあった、彼の写真に心を奪われたのだ。
この「堕ちていく」感覚、私にも経験がある。本屋で偶然見かけた雑誌の表紙に出ていた少女に心奪われ、気がつけばそれを手にとってレジに向かっていた(ちなみにその少女こそ、本ドラマに出演しているアイドル時代の平井理央だった。もう20年ほど前のことである)。
アイドルを追いかけていく中で、いろいろと楽しい瞬間はあるが、好きになった最初のトキメキというのは、何物にも代えがたいものだ。私の実感としては、アイドルは心の隙間にスッと入ってくるものだと思う。つらいことがあったり、何かに思い悩んでいたりしたとき、そこに現れた天使のように救われた気持ちになるのだ。
美佐代は、真美とのランチに雅(平井理央)を同席させるが、真美は雅を見て驚く。実は、真美の夫は雅のファンで、「ヴィーナス」と崇めていたのだ。そして真美には、密かな楽しみもあった。それは、スノーホワイツのメンバーをモデルにしたBL小説を読むこと。勧められた美佐代は、「みらきゅんが私以外の人と恋愛するのは見たくない」と言って、やんわりと断る。ひとしきり話をした別れ際、普通であることにこだわっている真美に対し、美佐代は言う。
「もう、普通なんてやめちゃえば?」
もしかしたら真美が待っていたのは、この言葉だったのかもしれない。
そもそも、「普通」というのは、実に曖昧な基準だ。言葉通りに捉えれば、そこに属する人たちの平均値ということになるだろうが、実際は多分に主観的な要素が混じる。
例えば、真美は「夫を殺したい」と思った時、ネットで同じ思いを抱いている人がたくさんいることを知って安心する。しかし、実際、夫を殺したいと思うことは決して普通の精神状態ではない。そんな実態の見えないものに縛られることは、美佐代の言う通り、さっぱりとやめてしまえばいいのだ。
もちろん、今の日本では、「周りに合わせて生きる」というのも大切だろう。しかし、誰にだって人に言えない秘密があるように、「普通ではない部分」というのも持ち合わせているはずだ。要はバランスの問題なのだ。自分の中の普通な部分と特別な部分、それぞれを共存させることで、折り合いをつけていくものだと思う。
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