レイプ殺人や自殺が相次ぐ犯罪多発地域とは……!? 米国騒然の社会派サスペンス『ウインド・リバー』
#映画 #インタビュー
人間が住むべきではない土地がある。そんな土地に人間を強制移住させたら、どんなことが起きるのか? SF大作『アベンジャーズ』シリーズで知られるジェレミー・レナーとエリザベス・オルセンが共演した『ウインド・リバー』は、米国きっての犯罪多発地域を舞台にした社会派ミステリーだ。公開当初はわずか4館でのスタートだったが、米国の歴史的暗部をあぶり出したシビアな内容はネット上で話題を呼び、全米2,095館へと拡大公開されるロングランヒット作となっている。
本作で描かれるのは、米国中西部ワイオミング州にある「ウインド・リバー」と呼ばれるネイティブアメリカン保留地区。雪山に閉ざされた陸の孤島だ。人間が暮らすのには不向きな貧しい土地だが、広大な狩猟地を奪われたネイティブアメリカンたちは米国政府によって移住を強いられた。産業と呼べるものがないため、失業者が多く、アルコール&ドラッグへの依存率や自殺率も異様に高い。しかも警察の捜査が及びにくいため、レイプ殺人が起きても被害女性は失踪者扱いとなり、野外に放置された遺体は野生動物たちに食べられてしまう。被害者遺族は、遺体にすら会うことができない。映画『ウインド・リバー』は現代の米国で起きている、悪夢のような現実を映し出していく。
主人公となるのは野生生物局に所属する白人ハンターのコリー(ジェレミー・レナー)。保留地区で飼育されている家畜を狙うコヨーテなどの野生動物を狩るのが彼の仕事だ。ある日、コヨーテ親子を求めて雪山に入ったコリーは、血を吐いて倒れている裸足の少女ナタリーを見つける。ナタリーの手足は凍傷で黒ずみ、息はすでに絶えていた。コリーからの通報を受けた部族警察長のベン(グラハム・グリーン)はFBIの出動を要請する。吹雪の中、新米女性捜査官のジェーン(エリザベス・オルセン)が到着。フロリダ出身のジェーンは、雪で覆われたこの土地を捜査するにはあまりにも場違いの軽装だった。
地元の監察医による検死が終わった。強姦および暴行された痕があるが、直接の死因はマイナス30度まで冷え込む夜の雪山を走ったために、肺胞が凍り付き、吐血した血が肺に溜まっての窒息死。レイプ現場から逃げ出した途中で力尽きたに違いないが、他殺扱いにはならないと知らされ、ジェーンは愕然とする。コリーの娘も3年前に失踪し、ナタリーと同じような状況で見つかっていた。この地では若い女性はみんなレイプの対象として見られ、無事でいることのほうが珍しかった。地勢的にも社会的にも特殊なこの地域での捜査を続けるため、ジェーンはコリーに協力を求める。頼りなさげな若い女性捜査官と悲しい過去を背負った中年ハンターは、米国社会の暗部に立ち向かうことになる。
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