W杯の”番狂わせ”で自殺者も……過熱する中国サッカー賭博事情
#中国
先日閉幕したサッカーW杯ロシア大会では番狂わせが頻発し、各国ファンの熱狂と落胆が渦巻いた。そんな波乱のW杯は、出場していない中国にも大きな経済効果をもたらしたようだ。
中国の経済雑誌「中国経済週刊」やネットメディア「網易」などの報道によると、W杯開催期間中の6月11日から7月8日までの、国家体育総局(日本のスポーツ庁に相当)が運営管理するスポーツくじの累計売上高は364.28億元(約6,066億円)だった。4年前のブラジルW杯の際は129.21億元(約2,143億円)で、売り上げは3倍近くまで伸びたことになる。
ただ、この売上高は公営のサッカーくじのみで、違法なくじや、海外のブックメーカーを介して購入されたとみられるくじは数字には入っていないという。そのため、実際の売り上げは、前出の数字の倍近くあってもおかしくない。
北京在住のサッカー好き日本人男性も、中国でのW杯賭博の盛り上がりについてこう話す。
「もともとサッカー好きでバクチ好きという国民性もありますが、中国でのフィンテックの拡大も、サッカー賭博の盛り上がりの要因となっています。今大会では、スマホの違法サッカーくじアプリや、中国版LINE・微信(WeChat)のグループチャットを介した賭博も横行しましたが、これは前大会では見られなかった動き。いまやWeChat Payのようなスマホによる個人間決済が普及しているため、掛け金や当選金のやりとりも用意周到で当局にもバレにくい」
一方で、ブラジル、アルゼンチン、ドイツ、スペインなど優勝候補国が不調だったこともあり、思惑が外れて大損してしまった中国人も続出したようだ。特にグループリーグの韓国対ドイツ戦では、多くの中国人がドイツの勝利に賭けていたのか、韓国が2対0で勝利した直後には、「韓国なんか嫌いだ!」「韓国の馬鹿野郎」など罵詈雑言がSNS上で飛び交っていた。
また、6月18日には広東省恵州市の男性が、くじを外して大金をすり、殺虫剤を飲んで自殺を図る事件が発生するなど、W杯の開幕当初から深刻な社会問題になっていた。
当局は、携帯電話のショートメッセージでサッカー賭博への参加を自重するよう市民に呼びかけたり、違法くじアプリやサッカー賭博の胴元の摘発なども行っていたが、どこまで効果があったかは怪しい。
W杯出場は中国の悲願だが、自国が出場していなくても自殺者が出るほど過熱するサッカー賭博。出場したあかつきには、どうなってしまうことやら……。
(文=大塚淳史)
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