「いつか阿佐ヶ谷ハイムを……」阿佐ヶ谷姉妹“ルール”なき共同生活のススメ
#お笑い #インタビュー
■テレビは思い出作り
――本に収録されている書き下ろしの恋愛小説でもやっぱり、片鱗が。
美穂 好きなものをいろいろ入れて書いただけなんですけど。
江里子 いやもう私は、この美穂さんの『3月のハシビロコウ』ができたときに、傑作だなと思って。人間の目じゃない、むしろ動物の目から見た世界……そういう感じの不思議さがあって。美穂さんの実話じゃないんですけど、美穂さんというフィルターを通して生まれた作品なんですよ。書きながら、その都度その都度、私にまたチェックを強要するんです。それがどんどんいい感じになってくる。それで私、ちょっと一回筆を折ろうかって思ったぐらい。こんな面白いもの書けないからどうしよう……ってなったぐらい。
美穂 私の小説のほうは、お姉さんの生態をいっぱい入れられたんで。それでなんか、楽しく書けたんですよ。お姉さんはすごい肩に力が入ってて。すごいかっこつけで書いてたので、そこは「かっこつけだな」って指摘しました。
――厳しい編集者ですね……。
美穂 すごいいいのを書こうとしてるっていう感じは出てたので。「お姉さん、リラックスして」って。
江里子 本当に、なかなか書けなくてね……。私、向田邦子さんが好きで。向田さんのエッセイや小説に、すごく憧れてて。
美穂 理想が。
江里子 そうね。理想が高かったのよ。書いている途中で、山崎ナオコーラさんの本を読ませていただく機会があって。「ああ、ほんとにプロの方ってすごいな」って。「どうしたら、ああなれるんだろう」って、やっぱり、そっちに行こうとしてた。
美穂 その傾向は、すごい強い。何回言い聞かせても、そう思っちゃう。
江里子 美穂さんはちゃんと自分の身の丈を知った感じで、無理はしない。今回は本当に勉強になったわ。
――たくさんテレビにも出て、いわゆる「ブレーク」というのを果たしてもなおスタンスを変えないのは、すごいことだと思います。お2人のお話を聞いていて、だからこの本には希望と癒やしがあるんだなと。夫婦や親子やきょうだいでなくても、こういう関係性を築けるんだ……っていう。
江里子 そんないいように言っていただいてるんですけど、自分たちで選択してこうなったわけじゃなくて。成り行きでなっちゃったみたいなところはすごくあって。だから恥ずかしいんですけど。
美穂 こんなにのほほんと、なんにも考えないで暮らしてる人がいるんだと思って、安心してもらえたらうれしいですね。
江里子 これがずっと続けばいいわね。50代になっても、60代になっても。私は夢があって……。
――なんですか?
江里子 ゆくゆくはここに親とかもね、呼び寄せたりして。
美穂 阿佐ヶ谷にね。
江里子 阿佐ヶ谷ハイムをね。
美穂 みんな住める。
江里子 共同体じゃないですけど。親やお友達とか、何人か寄り集まって住んでるような。阿佐ヶ谷ハイムができたら、って。
――冠番組を持つとか、そういうことではなかった(笑)。
美穂 だいたい今も、「テレビに出させてもらえるのは思い出作り」って言ってますし。
江里子 そうね。タモリさんに会えたわね。
美穂 これからも思い出が増えたら、ぐらいですかね。
(取材・文=西澤千央)
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